こんにちは!産前産後フィットネストレーナーのYUMI(@yumiid/@you_me314)です。
妊娠中に筋トレをするにあたり気になるのは、
ウェイトトレーニングをしてもいいのか?
ということですよね。
これに関しては、
「はい、いいです!」
「いや、ダメです!」
という通り一遍な回答はできません。
その妊婦さんの、諸々の背景を考慮する必要があるからです。
ではどんな場合なら妊婦さんはウェイトトレーニングをしてもいいのか、また、妊娠中にウェイトトレーニングをするにあたって気をつけなければならないことは何か、について見ていきましょう!
妊娠中のウェイトトレーニングは絶対にいけないということはない
妊娠中のウェイトトレーニングに関しては、大規模な研究でその安全性が示されているわけではありません。
なぜかというと、倫理的な問題があるから。
妊娠中の女性を何百人もリクルートして、ウェイトトレーニングをさせて、それが母体と胎児にとって安全か安全じゃないかを確かめるなんて、リサーチデザイン的に無理があります。
なので、今は妊娠中のウェイトトレーニングについて出ている研究は小規模なものが多く、言及に値するものが少ないのが現状です。
と前置きをしつつも、2016年にノルウェイの39,184人の妊娠中の女性を対象にした調査結果が発表されました(1)。
それによると、
・妊娠中に週5回以上運動していた初産婦は、緊急帝王切開になるケースが少なかった
・中でもハイ・インパクト・エクササイズ(クロスフィットなどの激しいエクササイズ)を妊娠中にしていた初産婦は、緊急帝王切開になる確率が最も少なかった
ということが分かっています。
なので、妊娠中に負荷の高い運動をすることが、メリットになることもあるということですね。
ただし、この研究は初産婦に限ったもので、二回目以降の妊娠に関しては明らかにされていません。
また、妊娠中の運動に関するさまざまな研究で知られるジェームス・クラップ氏の研究によると、妊娠中に「普通~ややきつい」程度の運動を続けた妊婦でも、早産や破水の発生率が上がることはない、とされています(2, p76)。
また、クラップ氏は「ウェイトトレーニングは母体の妊娠への適合を助け、妊婦においては最良の運動種目」とウェイトトレーニングについてはポジティブな見方をしています(2, p154)。
ただし、「適切な頻度、運動時間、運動強度は個々において異なる」としています。
では、自分はどれくらいのウェイトトレーニングをしても良いのか?
というのが気になるところですよね。
妊娠中のウェイトトレーニングの強度
これには妊娠前からどれくらいのウェイトを上げていたか、というのが重要なポイントです。
妊娠前にバーベルスクワットやデッドリフトをしたことがなかったのに、妊娠してからそれから始めるのは絶対にNGです。
まずはウェイトなしの自重トレーニングで、十分な筋力をつけてから、徐々にステップアップしていくのが良いでしょう。
自分の筋力とテクニックの確認として、こんなポイントを確認してみましょう。
ウェイトなしの自重で
・ハーフスクワットは問題なくできるか
・フルスクワットは問題なくできるか
・フルスクワット20回×5セットをこなせるか
こなせてもひどい筋肉痛が来て次の日歩けない、という場合は、バーベルから始めるのは適切でないかもしれません。
これは妊娠中の方に限ったことではないのですが。
まずは自重のメニューをこなせる筋力があることを確認してから、徐々にウェイトを取り入れていきましょう。
ここでウェイトとは、
軽いダンベルなのか?
20キロ〜のバーベルなのか?
それは個々によります。
不安な場合は、専門のパーソナルトレーナーに相談するのが良いでしょう。
いつからウェイトトレーニングをしてもいいの?
一般的には運動は「安定期に入ってから」と言われていますが、最新のACOGガイドラインには、合併症のない妊娠中の女性は妊娠期全てにおいて運動をしたほうが良い、と書かれています。
妊娠初期には流産が起こりやすいことから、妊娠初期の運動は流産を関連付けて考えられがちです。
しかし、妊娠初期の運動は流産とは関係がないことが分かっています(3)。
ですので、つわり、出血、その他運動の禁忌とされる症状や合併症がなければ、妊娠中の全ての期間においてウェイトトレーニングをおこなうことが、流産のリスクにつながるとは考えにくいです。
妊娠中のウェイトトレーニングを始める前に
妊娠中にウェイトトレーニングを始める前に、大前提として自分がエクササイズの禁忌に該当しないか、医師に運動を止められていないかを確認してください。
詳しくはこちらをチェック↓
そうした上で、以下のポイントを確認してみてください。
・尿漏れはないか
・骨盤、恥骨、尾てい骨に痛みや違和感はないか
・骨盤臓器脱の症状はないか
こうした症状があるから、全くやってはいけないということではありません。
体の角度や、ウェイトの重量、持ち方などを工夫すれば、症状が軽減することも考えられます。
しかし、症状が持続する、または悪化するのに、果たしてウェイトトレーニングを続ける必要があるのか、自分の中での意味付けを明確にする必要があります。
妊娠中のウェイトトレーニングにおいて注意すること
一番に注意が必要なのが、呼吸です。
呼吸を止めて踏ん張ると、腹部内にプレッシャーがかかります。
プレッシャーで押された腹部の臓器や赤ちゃんは、その分下に落ちます。
そして下の方にある筋肉、つまり骨盤底筋群に負荷がかかります。
こちらの投稿に詳しく書いていますが、妊娠中の骨盤底筋群は、子宮の重みですでに負荷がかかっている状態です。
それに加えて息を止めて負荷をかけることで、骨盤底機能不全や骨盤臓器脱のリスクにつながります。
脅すわけではないのですが、ウェイトを上げるときに息を止める癖のある人は、あらためて自分の呼吸の取り方を確認すると良いでしょう。
このため私の妊娠中・産後のパーソナルトレーニングでは、しつこいほど呼吸の取り方について指示します(笑)
また、呼吸を止めることで血圧が上がることがあります。
高血圧も、妊娠中にはリスクになり得ますので、注意が必要です。
何のためにウェイトトレーニングをしたいのか?を明確に
妊娠中の体は、一般的に考えられている以上に、色々な動きをこなすことができます。
妊娠中にオリンピックの大会に出て、メダルを取る選手もいるくらいです。
ひと昔前であれば、産休なんてものはなかったし、産むその日まで畑仕事をしている妊婦さんもいました(うちのお婆ちゃんもそうでした)。
妊娠中の体は、実はそんなにやわにできていないのです。
なので、ウェイトトレーニングが趣味で、それが自分をハッピー&健康にしてくれる、と感じている妊婦さんは、妊娠を期に諦める必要はない、というのが私の見方です。
とはいいつつも、妊娠中の運動は自分と赤ちゃんの健康のためであって、
身体能力の高みを目指す時期ではないと考えています。
あなたが妊娠中にもウェイトトレーニングをしたいのは、
自分の健康のためですか?
赤ちゃんのためですか?
自分の目標のためですか?
自分の中で腑に落ちる理由があり、妊娠中の体がウェイトに耐えうる力があると確信できるなら、やってもかまわないと思います。
現に私も、ある段階までは妊娠中でもウェイトトレーニングをしていました。
しかし、どこまでパフォーマンスを追及するか?については、自分の体の声をよく聞いて、判断するようにしていきましょう。
では今回はこのへんで!
1. Owe KM, et al. (2016) Exercise during pregnancy and risk of cesarean delivery in nulliparous women: a large population-based cohort study.
2. ジェームズ クラップ (2000) 妊娠中の運動ハンドブック, p76, p154
3. Michelle F Mottola, et al. (2019) 2019 Canadian guideline for physical activity throughout pregnancy