産後の女性がコンプレックスを持つ場所No.1はお腹といっても過言ではないでしょう。
出産してかなり経っているのに、ぽっこりお腹が解消しないのはなぜ?!
何とか引っ込めないと!と思っていわゆる「腹筋運動」を頑張ってしまい、それが尿漏れの原因を作ってしまうことがあるというのは、こちらの投稿で詳しく触れました。
ですが、お腹に関しての一番の勘違いが、
腹筋を鍛えればお腹が引っ込む
ということなのです。
え?!筋肉をつければ脂肪が減るんじゃないの?!そう思っている方もいるかもしれません。
実はぽっこりお腹が解消しないのは、お腹に脂肪がついていること以外にも、意外な要因があるのです。
筋トレしてもぽっこりお腹が解消しない意外な理由
まず始めにぽっこりお腹の構造を知ろう
まず、ぽっこりお腹=腹筋運動をすれば良い、という誤解に関してです。
解剖学を少しでも学んだことのある方ならご存じかと思いますが、脂肪細胞と筋細胞はまったく違う組織です。
ですので、脂肪が筋肉に変わるわけではありません。
このため、一般的にいう「腹筋をつけてお腹をスッキリさせる」を実現させるためには
①腹部の脂肪を取ること
②腹部の筋肉をつけること
という二つの異なるアプローチが必要になります。
①腹部の脂肪を取ること
まずお腹の脂肪を取るには、一般的には脂肪燃焼効果のある運動をする必要があると考えられています。
それは、
・有酸素運動
・HIIT(高強度インターバルトレーニング)
などです。
いわゆる「腹筋運動」に脂肪燃焼効果があるとは限りません。
「腹筋運動」をHIITスタイルでおこなった場合、脂肪燃焼効果は期待できるかもしれません。
しかし、それにはかなり強度の高い腹筋運動をする必要があるので、腹直筋離開や骨盤底機能の低下の懸念がある産後の女性にはあまりおすすめできません。
また、脂肪を取るには食事の調整が必要になります。
それについてもこの後触れていきます。
②腹部の筋肉を付けること
腹筋を鍛えるには、クランチ、プランク、レッグレイズなど実に様々な筋トレがあります。
これらは腹部の筋肉を「肥大」させる働きがありますので、効果的に行えば「割れた腹筋」をつくれます。
しかし、腹部の筋肉をいくらつけたところで、腹筋の上に脂肪がついていたり、腹筋の下にいろいろなものがあったとしたら、求めているような「割れた腹筋」は実現できないのです。
腹直筋はもともと8つに分かれていますから、誰でも腹筋は割れているものなのです。
では、ぽっこりお腹解消を阻害している、腹筋の「下」にあるものとは何なのでしょうか?
ぽっこりお腹が解消しない理由その1:内臓脂肪
一つ目は内臓脂肪です。
脂肪には2種類あります。皮下脂肪と内臓脂肪です。
皮下脂肪は文字通り皮膚の下につく脂肪、内臓脂肪は内臓のまわりにつく脂肪です。
皮下脂肪は体の90%、残り10%が内臓脂肪と言われています。
以下の図を見ると分かりやすいのですが、subcutaneous fatというのが皮下脂肪、visceral fatというのが内臓脂肪です。
この図では説明がないのですが、subcutaneous fat(皮下脂肪)とvisceral fat(内臓脂肪)の間にあるのが腹部の筋肉です。
ですので、皮下脂肪が取れても内臓脂肪が腹筋の下についていれば、なかなかぽっこりお腹というのは解消しないものなのです。
内臓脂肪は特殊な付き方をする脂肪です。
皮下脂肪が単にカロリー過多や運動不足などによって付くのに対し、内臓脂肪はインスリンやストレスホルモンのコルチゾールが絡んでいます。
インスリンやコルチゾールが、内臓脂肪を付きやすくさせることが研究で明らかになっています(1)。
このため、いくらカロリー摂取量を減らしても、以下の要因があるといつまでたっても内臓脂肪が減らないのです。
・糖質の多い食事で血糖値を上げすぎて、インスリンを大量放出している
・心理的ストレスなどでコルチゾールを出しすぎている
ちなみにコルチゾールは心理的ストレスだけではなく、お酒やカフェインでも上がります(2,3)。
お酒を良く飲む人が「ビール腹」になるのは、内臓脂肪がつくからなのです(4,5)。
ぽっこりお腹が解消しない理由その2:便秘
2つ目は便秘です。
お腹に中身が入っていたら、どんなに腹筋を鍛えてもぽっこりお腹は解消しません。
腹筋を頑張るよりも、まずは便秘解消をした方が、フラットなお腹への近道かもしれません。
毎日排便できていますか?
食物繊維や水分は十分に取れていますか?
便の8割は水分で、食物繊維は便の「かさ」になります。
便秘薬などを飲む前に、食事の改善が必要かもしれません。
便秘解消について詳しくは以下にまとめています。
また、一度赤ちゃんを宿したことのあるお腹は、便秘の時にぽっこりしやすいのも事実です。皮膚も結合組織もストレッチが効きやすくなっているからです。
ぽっこりお腹が解消しない理由その3:姿勢
産後は腹部の筋力の衰えや、疲労などにより、正しい姿勢を保つのが難しい時期です。
そもそも正しい姿勢が何か分からない!という方も多いと思います。
気になるぽっこりお腹も、良い姿勢を保てばすっきり見えてくるものです。
よく陥りやすい姿勢の乱れは、「骨盤前傾」と「骨盤後傾」です。
「骨盤前傾」の特徴は、以下のような状態です。
・骨盤が前に傾いている
・肋骨が骨盤よりも前にある
・お尻が後ろに突き出ている
・腰のカーブが強くなっている
「骨盤後傾」の特徴は、以下のような状態です。
・骨盤が後ろに傾いている
・肋骨が骨盤よりも後ろにある
・お尻が前方に引っ込んでいる
・胸骨のカーブが強くなり、猫背になっている
自分がどちらの姿勢になりやすいか、身に覚えはありますでしょうか?
「骨盤前傾」の姿勢だと、おへその前が出て見えます。
「骨盤後傾」の姿勢だと、下っ腹が出て見えます。
どちらかの姿勢をしている自分に気付いたら、肋骨を骨盤の真上に置くように意識してみてください。
この姿勢は、どこかしかの筋肉を使ったりして、保つのがしんどいと思います。
ですが、筋トレしているつもりで、この姿勢をキープするように意識してみてください。
▼動画で姿勢をチェック
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ぽっこりお腹が解消しない理由その4:腹直筋離開が治っていない
特におへそ周りだけぽっこり出ているという方は、この可能性があります。
妊娠・出産を経験する女性には、誰でも腹直筋離開のリスクがあります。
産後1ヵ月経ってもお腹がへっこまない!!と焦っている方は、まだ腹直筋離開が治癒していないのです。
一般的には、腹直筋離開は産後6~8週間で治癒するといわれています。
ほとんどの場合、特段何もしなくても治癒します。
焦らず自然に治癒するのを待ちましょう。
産後半年経っても左右の腹直筋の間に不自然なギャップが診られる方は、産後専門のフィジカルセラピスト(理学療法士)にかかってみても良いかもしれません。
筋肉や結合組織がどうなっているのかエコーで診てくれて、リハビリをしてくれます。
おすすめのクリニックはこちらにまとめています。
ぽっこりお腹が解消しない理由その5:生理前か生理中
生理前か生理中には、お腹がぽっこり張ることがあります。
これは普通です。そういうものなのです。
普段は「腹筋が割れて」見える私も、生理前後はこんな感じになります。
※1枚目が生理中の写真、2枚目がぽっこりしていない時の写真です。
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生理前から生理開始数日間は、体が水分を溜め込みやすい時期です。
女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンのバランスの変化により、体が水分と塩分を溜め込むからです(6)。
対策としては、以下で症状が改善することもあります。
・塩分を少なめにする
・カリウムの多いものを食べる
・水分の摂取量を増やす
・精製された白い炭水化物を減らす
・定期的に運動する
ですが、生理前の1週間~生理開始から数日間は、お腹がいつもより少し膨らんでいても良い時期だと思ってもよいのではないでしょうか?
子宮の中では子宮内膜がはがれる準備をし、体内では様々なホルモンのバランス変化が起こっている時期です。
お腹の中では色々なことが起こっているのです。
そもそもフラットなお腹でいなきゃいけないものなの?
お腹は、たくさんの内臓が入っている場所です。
胃、十二指腸、小腸、大腸、子宮、卵巣、膀胱、腎臓など、色々なものが格納されているのです!!
現代での「美」はフラットなお腹かもしれません。
ですが、見てください。中世の美女たちを。
ヴィーナスだってお腹出てんじゃん!!!
お腹とは、本来少し膨らんでいても良いものなのです。
フラットなお腹が「美」の象徴となったのは、つい数百年くらいのことなのかもしれません。
産後のお腹が減っこまないと焦っているママさんたち!!
妊娠で9~10ヵ月かけて膨らんだお腹です。
戻るのにもう少し時間をかけてあげてみても良いのではないでしょうか?
特に産後1~3ヵ月は、クランチやプランクなどの筋トレをするには早すぎます。
正しいテクニックで行わないと、妊娠や出産でダメージを受けた骨盤底筋群に負担をかけるからです。
ぽっこりお腹が解消しないのは、腹部の筋力の低下以外にもこれだけの要因があります。
思い当たるふしがある方は、腹筋を鍛えること以外の改善を、先に考慮してみても良いかもしれませんね!
何から手をつけたらいいか分からない!という方は、オンラインクラスやカウンセリングもおこなっています。
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<参考文献>
1. P Björntorp (1996) The Regulation of Adipose Tissue Distribution in Humans
2. Ellena Badrick, Martin Bobak, et al. (2007) The Relationship between Alcohol Consumption and Cortisol Secretion in an Aging Cohort
3. William R. Lovallo, Thomas L. Whitsett (2008) Caffeine Stimulation of Cortisol Secretion Across the Waking Hours in Relation to Caffeine Intake Levels
4. Frédéric Duthei, et al. (2013) Different modalities of exercise to reduce visceral fat mass and cardiovascular risk in metabolic syndrome: the RESOLVE* randomized trial
5. Rania A. Mekary, et al. (2014) Weight training, aerobic physical activities, and long‐term waist circumference change in men
6. Nina S. Stachenfeld (2010) Sex Hormone Effects on Body Fluid Regulation