新型コロナのワクチンが出てきた頃に、血栓症のリスクがあるとニュースで大きく取り上げられたのは記憶に新しいと思います。
CNNのニュースでは、ジョンソン&ジョンソンのワクチンを接種した680万人に1人が血栓症を発症したと報じていました。
そして、全て女性だったと。
私、このニュースを見た時こう思わざるを得なかったんですね。
その中で何人の女性が、ピルを飲んでいたり、妊娠中や産後3ヶ月未満だったんだろう…?
なぜなら、まさにピルを飲んでいる人や、妊娠中や産後3ヶ月未満の人は、血栓症リスクが高くなるからです。
えぇええ~~自分該当する!!と思った方!
落ち着いてください!
多くの場合、血栓症は自分で予防できるのです。
この記事では、
・妊娠中や産後の女性の血栓症のリスク
・血栓症になりやすいタイプの人
・自分でできる予防法
について詳しく解説していきます!
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妊娠中~産後3ヶ月にかけて高まる血栓症のリスク
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、妊娠中の女性に血栓症ができるリスクは、非妊娠時の5倍になるそうです。
さらに、それは産後3ヶ月まで持続するとのこと。
5倍という数字は、無視できないものですよね…
そもそも血栓症って何?
血栓症とは、血の塊が血管の中に出来て、詰まってしまうことです。
血栓症は、まずは体の端っこである手足にできやすくなっています。
手足に血栓症が出来た状態を深部静脈血栓症と呼び、むくみ、しびれ、痛みなどが起こります。
さらに危険なのが、手足で出来た血栓が肺に飛んだ時。
これを肺塞栓症(はいそくせんしょう)と呼び、命に関わることもあります。
症状としては、息苦しい、胸の痛み、心拍数が上がる、めまい、吐血などが起こります。
アメリカでは、肺塞栓症は最も多い妊婦の死因となっています。
なぜ妊娠中・産後に血栓ができやすいのか?
ではなぜ、妊娠中や産後に血栓ができやすいのでしょうか?
これには様々な要因があります。
①妊娠中&産後は血が固まりやすい
妊娠中は、出産での大量出血に耐えるために、血が固まりやすくなっています。
そもそも妊娠中は血液量も平均45%増えると言われています(1)。
出産で大量出血をしてもいいように、血液の量も成分構成も変わっていくんですね。
②エストロゲンの増加
妊娠中には、女性ホルモンのエストロゲン値が高まります。
エストロゲンには血液の凝固作用があるため、これも血栓症の原因をつくります(2)。
ちなみに、避妊用ピルを飲んでいる人は、血栓症のリスクが高まると言われていますね。
これも、避妊用ピルには合成エストロゲンが含まれているためなのです。
③お腹が圧迫されるから
妊娠後期に入ってくると、お腹が大きくなって骨盤まわりの血管が圧迫されるため、血液の巡りが悪くなります。
これも、血栓症の原因をつくることになります。
どんな人が特に血栓症になりやすい?
血液量や質の変化、お腹が大きくなることの他に、特に血栓症になりやすいタイプの人がいます(3)。
以下に該当しないか、確認してみましょう。
・家族で血栓症になった人がいる家系、遺伝の要素
・過去に血栓症になったことのある人
・帝王切開をした人(リスクがさらに2倍に)
・動かない期間が長かった人
(つわり、切迫流産、切迫早産などで横になっていた期間が長かった人)
・座っている時間が長い人(特に脚を組んで)
・35歳以上の人
・妊娠に伴う合併症があった人
・基礎疾患がある人(心臓や肺の症状、糖尿病など)
・肥満の人
・多胎妊娠の人
・ホルモンを使用した不妊治療をした人
・喫煙をする人
血栓症を予防するには
ここまで読んでいただいて、
「私リスクが高い人に該当する!!一体どうしたらいいの!!」
と不安になってしまった方もいるかもしれません。
怖がることはありません!!
最初にも書いた通り、血栓症は多くの場合、自分で予防することができます。
①動き回る
まず始めに、動き回ることです!
血栓症の予防で最も大切なことは「体を動かして血液を滞らせないこと」です。
妊娠したら「安静に、安静に」と言われるかもしれません。
しかし、妊娠&出産について国際的に権威のあるアメリカ婦人科協会(ACOG)の最新のガイドラインによると、「健康な妊婦さんなら運動してもいい、ではなく、した方がいい」と書かれています。
もし合併症などがあって運動を止められている状態でも、手足を動かしたり、可能な範囲でストレッチをする等、できることはあります。
私は、妊娠中&産後専門のフィットネストレーナーとして、産後すぐには運動を頑張りすぎない方がいいと言っていますが、全ての運動がダメとは一言も言っていません(笑)。
軽いストレッチやリハビリ的な運動であれば、産んだ直後からやっても構わないのです。
具体的に産後何をやったらいいか分からないという方のために、ストレッチメニューをまとめました!
こちらは、出産を終えた女性が病院や産院にいる間からでも安全に行っていただけるものです。
ぜひこれから出産されるという妊婦さんや、出産されたばかりという方はダウンロードしてみてくださいね!
妊婦さんにおかれましては、妊娠中にもできる運動のレッスンをたくさんYouTubeにアップしていますので、ぜひ一緒に動きましょう!
②水を飲む
二つ目は、水分を十分に摂ることです。
CDCは、
・妊婦さんは1日にコップ10杯
・授乳中は1日にコップ12~13杯
をすすめています。
ここでいうコップ1杯は200~250mLのことを指すので、大体1日に2~3リットルと考えると良いでしょう。
2リットルと聞くと、あの大きなペットボトルを1本飲まなきゃならないのかぁ…
と、げんなりするかもしれませんが、真水でなくてもいいのです。
つわりの時は水でも気持ち悪いこともありますよね。なので、カフェインの入っていないお茶など、その時に飲みやすいものをこまめに飲むようにしてみてください。
ちなみにカフェインは利尿効果があるため、逆に脱水を促進してしまうことがあるので、カフェイン入りのコーヒーやお茶は最小限にしましょうね。
③座っている時間が長い日は、1~2時間に1回は立ち上がる
これは、①の動き回ると共通することがありますが、脚を組んでずっと座っていることが、リスクにつながります。
オフィスワークの方や、座っての移動が長い日は、1~2時間に1回は立ち上がるようにしましょう。
こういう点でも、こまめに水分をとっておくと、1~2時間に1回はトイレに行きたくなるものなので、一石二鳥ですよね。
④血栓症のリスクが高くなる要因があれば、医師に伝えておく
家族の誰かが血栓症になった、自分が過去になったことがある、基礎疾患などリスク要因があれば、担当の医師に伝えてみてください。
もし医師の方から見てリスクが本当に高ければ、投薬なども検討してくれるかもしれません。
以上、妊娠中&産後の血栓症リスクについて取り上げてみました。
とにかく、動く!水分を摂る!を徹底してみてください!!
Keep moving, mama!
1. Circulation. (2014) Cardiovascular Physiology of Pregnancy. https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/circulationaha.114.009029
2. Surabhi C.,et al. (2012) Physiological Changes in Hematological Parameters During Pregnancy. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3422383/
3. The National Blood Clot Alliance. Centers for Disease Control and Prevention. Pregnancy and the Risk for Blood Clots
https://www.stoptheclot.org/spreadtheword/pregnancy/