こんにちは!妊娠中&産後専門フィットネストレーナーのYUMIです。
このブログでは以前、骨盤底筋群の機能について紹介しました。
妊娠・出産を経て骨盤底筋群には大きな負担がかかります。
骨盤底筋群は、妊娠中は最大5キロにもなる子宮の重さを支えなければなりませんし、出産では経腟分娩の場合、骨盤底筋群が最大限にストレッチされます。
産後数ヶ月は骨盤底筋群が弱っている状態なので、腹部に力の入る運動や、ジャンプ運動は控えなくてはなりません。
骨盤底筋群の機能が弱ると、尿もれや便もれ、骨盤まわりの痛みや性交痛として症状が出てくる場合があります。また、骨盤底筋群の機能低下で起こる症状の一つとして今回ご紹介したいのが、骨盤臓器脱です。
子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤といった内臓が下がってくる症状ですが、人知れず産後ママを悩ませています。
妊娠・出産を経験した女性なら誰にでもリスクがある骨盤臓器脱。
詳しく見ていきましょう!
骨盤臓器脱について知ろう!妊娠・出産を経験した人なら誰でもリスクはある?!産後の子宮脱と原因とは
骨盤臓器脱って何?子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、何が違うの?
骨盤臓器脱とは、骨盤底筋群の機能低下により、骨盤内の臓器が下がってきて、場合によっては膣、尿道、直腸の外に出てしまうことです。
骨盤臓器脱には、いくつか種類があります。
・膀胱瘤…膀胱が下がってきて膣の前側に出てきてしまうこと
・直腸瘤…直腸が下がってきて膣の後ろ側に出てきてしまうこと
・子宮脱…子宮が下がってきて膣の中に垂れ下がってしまうこと。膣ごと外に出てしまうということもある
どんな症状が起こるの?
骨盤臓器脱の症状は、ステージごとに分けられます。
軽い症状であれば、一日の終わりにお腹の中が下がってきているような感覚を得ます。長時間立っていた時などに、膣のまわりがきゅ~っとする感覚を得ることがあるかもしれません。
ひどい状態だと座ったときに何かが股の間で当たる感じがしたり、ゴルフボール大のものが出てきてしまうことがあります。
骨盤臓器脱が起こる原因は?
骨盤臓器脱が生じる原因は、大きく分けて二つあります。
一つ目は、経腟分娩などにより、筋膜や靭帯などの結合組織が伸びたり切れたりして、損傷したためです。
二つ目は、妊娠・出産、加齢などによる、骨盤底筋群の筋力低下です。
経腟分娩の時には、子宮口と膣が最大に開いて赤ちゃんが出てきます。その時、周りにある臓器である膀胱と直腸は、いつもとは違う位置に押しやられます。このように、出産の時のダメージで発症してしまうことがあります。
一方で、産後の女性に知っておいてほしいのは、骨盤臓器脱は出産によるダメージだけが原因で起こるのではないという点です。
出産後しばらく経ってから発症してしまう場合もあります。
後からなる時は、
①疲労の蓄積により徐々に症状が出てくる場合
②圧がかかったときなどに一気に発症してしまう場合
の二つががあります。
重いものを持ったり、ジャンプを伴う激しい運動も、リスク要因になります。
骨盤臓器脱は、妊娠・出産を経験した女性ならいつでもなりうるので、重いものを持ったりウェイトリフティングをする際は、腹腔内圧が骨盤底筋群の方にかからないように、呼吸の使い方を意識する必要があります。
骨盤臓器脱はどれくらいの確率でなるの?
症状の程度の差はあれ、アメリカでは子供を産んだことのある女性の50%は骨盤臓器脱を経験するといわれています (1)。
しかし、人に言いにくい症状であることから、受診がはばかられたり、どの病院を受診したらよいか分からずに、人知れず悩んでいる女性は数多くいます。
報告されていない症例も無数にあるため、実際は統計よりも多くの人が経験しているのではないかといわれています。
まだまだ認知度が低い骨盤臓器脱
骨盤臓器脱は、経験している人が多い割には認知が進んでいない疾患です。ジョンソンエンドジョンソンの調査によると、骨盤臓器脱について正しく認知しているのはたったの23.2%で、知らないと回答した人が63.8%に上りました(2)。
また、骨盤臓器脱の症状を抱えて婦人科を受診する患者も、半数以上が骨盤臓器脱というものを知らないというのです 。
女性のクオリティオブライフをこんなに脅かす疾患なのに、どうしてこんなに認知が進んでいないのでしょうか?
同調査によると、骨盤臓器脱の症状があっても受診するまでに1年以上かかってしまうケースが3割以上もいるそうです。その理由として9割の人が訴えているのは「恥ずかしいから」。また、単なる老化現象だと思っていて、治療できるものだとは知らなかった、という知識不足のケースも見受けられました。
いわゆる「おしも」のことなので、人に相談するのも恥ずかしいというのは仕方がないことですが、人知れず悩んで外出するのもはばかられ、うつになってしまうという人も少なくないといいます。
出産経験のある女性なら誰でも経験しうる骨盤臓器脱。女性の一般教養として、性教育のうちに組み込まれてもよいのではないでしょうか。少なくとも、マタニティクラスなどのカリキュラムに組み込んでほしいところです。
骨盤臓器脱とおぼしき症状があるときは、どうしたらいい?
アメリカやカナダ、オーストラリアなどでは、女性専門のフィジカルセラピー(理学療法センター)が普及しています。妊娠・出産を経た女性が、フィジオ(理学療法士)に骨盤底や腹直筋の機能を診てもらいにいくのが、一般的になりつつあります。「産後といったら骨盤底のフィジオに診てもらう」という人が増えています。
そこで、超音波を使って骨盤底の状態を診てもらい、必要あれば骨盤底のリハビリをしてもらうことができます。骨盤臓器脱の早期発見も可能です。リスク因子があれば、どのような点に気を付けて生活すればよいか指導してくれるので、未然に防ぐこともできます。
日本では、整体的な観点で骨盤の位置を治す「骨盤矯正」は人気がありますが、骨盤底専門の治療をおこなっている医院はまだ少ないのが現状です。専門的な治療をできるところが数少ないと、一般の目に知れわたる機会がありません。産後と言ったら骨盤矯正のイメージは定着してきていますが、骨盤底のリハビリというのは聞いたことがない人が多いのではないでしょうか。
日本では骨盤底専門のフィジオセラピーが一般化されていませんので、病院によってどの科をかかればよいかも変わってきます。
産婦人科で対応可能な病院もありますし、泌尿器科だったり、女性専門の外来を設けていることもあります。まずはお住まいの近くで対応可能な病院がないか、リサーチしてみてください。
私のサイトにある骨盤底トラブルおすすめクリニックリンク集も参考にしてみてください。
どんな治療法があるの?
治療法としては、骨盤底筋群のトレーニングで症状が軽減されるケースから、手術が必要なケースまで様々です。
中にはペッサリーという器具を装着することで、子宮脱の症状を防げる場合もあります。
ペッサリーは自分での脱着が可能なので、海外のトレーニーの中では、ウェイトトレーニングの間だけ装着するという人もいます。
妊娠・出産を経験する女性なら誰でも骨盤臓器脱のリスクがある。骨盤底筋群のケアを
妊娠中・産後専門のフィットネストレーナーとして私にできることは、出産を経験する女性なら誰にでも骨盤臓器脱のリスクがある、ということを伝えることです。
疑わしき症状がある場合は、すぐに専門機関を受診するようにしましょう。
また、今はそういった症状がないという方でも、一度子供を産んだら骨盤底筋群のケアは常に必要です。
具体的には、こんなことです。
・腹筋運動をする時は、腹横筋をしっかり稼働させる(詳しくはこちら)
・骨盤底呼吸を取り入れて、骨盤底筋群のトレーニングをする(やり方はこちら)
・膣の周りが下がってきた感覚を得る時は、お尻を胸よりも上にする時間を作る(逆立ち、ショルダースタンド、仰向けになって腰の下にクッションを置く、等)
・子供を抱っこする時やウェイトトレーニングをする時は、息を止めない
・疲労を溜めない
その他、骨盤底筋群にやさしい筋トレのテクニックについては、LIVEクラスのThe Best Shape Mamaやパーソナルトレーニングでご指導させていただいております。
詳しくはウェブサイトをご覧ください。
▶産後の方向けパーソナルトレーニング
▶オンラインクラスThe Best Shape Mama
1. OlsenAL, et al. Oregon Health Sciences University (1997). Epidemiology of surgically managed pelvic organ prolapse and urinary incontinence.
2. 放射線科情報ポータル Rad Fan Online. ジョンソン・エンド・ジョンソン、臓器が落ちてくる疾患「骨盤臓器脱」に関する50歳以上女性530名、婦人科開業医100名の調査結果.