こんにちは!妊娠中&産後専門フィットネストレーナーのYUMIです。
妊娠・出産を経験した女性にとって、骨盤底筋群の健康はとても大切。
尿もれ予防、姿勢改善、腰痛の軽減、そして自分らしい体の回復にもつながります。
でも…よく耳にする「ケーゲル運動」だけで本当に十分なのでしょうか?
結論から言うと、ケーゲル運動では不十分であり、骨盤底筋群の機能にかえって悪影響を及ぼす可能性があると多くの専門家が指摘しています。
この記事では、ケーゲル運動の問題点と、骨盤底筋群トレーニングにおすすめのエクササイズをご紹介していきます。
なぜケーゲル運動だけでは足りないの?
ケーゲル運動は「骨盤底筋をぎゅっと締める」動きですが、これは筋トレでいうと「二の腕だけ鍛えて、他の筋肉は無視する」ようなもの。
骨盤底筋は体の土台にあり、お腹、背中、横隔膜と連動して動きます。
また、股関節や足とも密接に連携しています。
そのため、全身の動きの中で骨盤底筋を正しく使えるようにすることが、本当の意味での機能回復につながります。
いわゆる「膣締め」をいくらやっても尿漏れが治らないとお悩みの方は、このポイントが欠けている可能性があります。
ケーゲル運動のやりすぎで起こること
骨盤底筋体操を必要以上に行うと、筋肉が常に緊張した状態(過緊張)になり、かえって尿もれや腰痛、性交痛などの原因になる場合があります。
NY Post(2025)では、専門家のMelissa Waldron医師が「ケーゲル運動をやりすぎると、筋肉が硬くなり正しい機能を失うことがある」と警告。適切な呼吸と緩める動きもセットで行うことが重要だとしています[1]。
私の妊婦さんやママ向けのプログラムでも、骨盤底筋群と呼吸を連動して行う「骨盤底呼吸」を必ず取り入れています。骨盤底呼吸は私が日本語で分かりやすいようにつけた名称なのですが、英語ではConnection BreathやCore and floor breathなど様々な呼び方がされています。この後やり方を解説していきますね。
また、バイオメカニクス専門家の専門家Katy Bowman氏は、ケーゲルはビタミン剤のようなものと称しています[2]。例えばビタミンAだけを過剰摂取しても、過剰症を引き起こしてしまいますね。
骨盤底筋群もビタミンAと同じように、単体で動かしすぎるのは逆効果。他の筋肉と連動させて動かす必要があり、骨盤底筋群だけを引き締めても、過緊張を生んでしまうのです。
骨盤底筋トレーニングに専門家も推奨する「全身アプローチ」
ケーゲルだけやるのがよくないなら、どうやって骨盤底筋群を動かしたらいいの?と思いますよね。
それは、全身を動かすことです!
骨盤底筋群は他の筋肉と連動して動くので、自分が意識していない動きでも、実は骨盤底筋群は動いているんです。
例えば、呼吸を取るとき。椅子に座るとき。
骨盤底筋群が動いたような感覚がない時でも、普段の生活の中で無意識で骨盤底筋群は縮んだり緩んだりしているのです。
ですので、全身を動かすことで、おのずと骨盤底筋群トレーニングになるということ。
座って膣締めばかりをやっていて「おかしいな…尿漏れ治らないな…」とう方は、立ち上がって動き出しましょう!!※
では、具体的にどのような運動をしていけばいいのでしょうか?
まずは呼吸と連動した「骨盤底呼吸」を
今までケーゲル体操をいくらやっても、尿漏れがひどくなるばかり、という方は、過緊張タイプの骨盤底筋(常に締まっている状態)である可能性があります。締めてばかりで、「ゆるめる」のが苦手なんですね。
そんな方にぴったりなのが、骨盤底呼吸。
方法:
①椅子に座り、足を少し広げます。
②骨盤を少し前に傾け、膣の部分が少し椅子に触れるように座ります。
③息を吸う時に、骨盤底筋群をリラックス。膣の部分がぺったり椅子につくような感覚です。(力いっぱいやる必要はありません)
④息を吐くときに骨盤底筋群を引き上げます。膣をが少し椅子から離れるのを感じます。
⑤ ③~④をゆっくり深呼吸しながら繰り返します。
回数:
10呼吸×3~5セット
▼動画は横になったバージョンを解説しています
下半身の筋トレ
骨盤底筋はお尻や足の筋肉とも連動して働きます。
Renew Healthの理学療法士は「スクワットやランジ、ブリッジは、骨盤底筋に自然に刺激を与え、実生活で使える力を育てる」と言っています[3]。
スクワット
方法:
①足を骨盤より少し広めに開きます。
②つま先とヒザは少し外向きで、同じ方向を向けます。
③椅子に座るかのように、上半身をナナメ前に傾けながら、ヒザを曲げ伸ばしします。
※妊婦さんは、お腹が大きくなって腿に当たるようであれば、脚をさらに広げてワイドで行います。
回数:
10~15回×3セット
必要に応じてウェイトを持って行いましょう。

出展:The Best Shape Mama Life
ランジ
方法:
①足を前後に開き、後ろ足はつま先立ちになります。
②ヒザを曲げ伸ばしします。
③反対側も行います。
バランスが安定しない場合は、椅子の背もたれなどにつかまって行いましょう。
回数:
10~15回×3セット
必要に応じてウェイトを持って行いましょう。

出展:The Best Shapeマタニティ&リペア
ブリッジ
方法:
①仰向けになり、膝を曲げます。
②腰を反らせないようにしながら、お尻を上に引き上げます。
③腰を床に降ろします(ドスンと降ろさない)。これを繰り返します。
妊娠後期の方で、仰向けが辛い方は、背中にクッションを置いたりして傾斜をかけて行いましょう。
回数:
10~20回×3セット

出展:The Best Shape Mama Life
ヨガ
スタンフォード大学の研究では、骨盤底筋に焦点を当てたヨガが尿失禁を65%減少させたという結果があります[4]。
以下のようなヨガポーズは、骨盤底筋の緩める力と締める力の両方を育ててくれます。
マラーサナ(深いしゃがみ)
出産準備にもとても良いヨガポーズです。
方法:
① 足を肩幅より少し広めに開き、しゃがみます
つま先は少し外向きにして、かかとが床につくように調整。背筋をまっすぐに保ちましょう。
② 両肘で内ももを軽く押し、胸を開きます
③ 腰や背中を丸めず、呼吸を繰り返します
吸うときに背筋を伸ばし、吐くときに骨盤底筋を軽く引き上げます。
回数:
5~10呼吸ほどキープ。

出展:The Best Shapeマタニティ&リペア
キャット&カウ
方法:
① 四つん這いの姿勢になる
肩の真下に手、腰の真下に膝を置き、背骨をまっすぐに整えます。首や肩はリラックス。
② 息を吐きながら背中を丸める(キャット)
おへそを背中に引き込み、尾骨を床に向けます。
③ 息を吸いながら背中を反らす(カウ)
胸を前に開き、尾骨を上げて腰をやさしく反らします。
この流れをゆっくり呼吸に合わせて行います。
回数:
5~10回

出展:The Best Shapeマタニティ&リペア
その他、骨盤底筋群の機能を鈍らせている意外なこと
姿勢
姿勢が悪いと、呼吸で横隔膜が膨らんだ時に下にいく圧で、骨盤底筋群に負担をかける可能性があります。
骨盤前傾や後傾の姿勢で、常に過ごすクセはありませんか?
私はレッスンで「骨盤の上に肋骨!」といつもお伝えしています。
そうすることで、普段の生活でも姿勢が意識できるようになります。
呼吸のとり方
ストレスによって呼吸が浅くなると、骨盤底筋群に負荷がかかることがあります。
浅い呼吸をしている自分に気が付いたら、お腹の底から深い呼吸に切り替えるように意識してみましょう。
最後に
ここまで読んでくださった方の中には、骨盤底筋群のトレーニングをしているつもりなのに、尿漏れなどの症状が良くならないとお悩みの方もいるかもしれません。
または、妊娠中や産後で、骨盤底筋群の衰えが気になってきている方かもしれません。
骨盤底筋群は、それ単体で動くのではなく、他の筋肉と連携して動きます。
だからこそ、全身運動が大切。
さらにそれだけではなく、姿勢や呼吸の取り方、ストレスなども関係していきます。
普段は意識することのない骨盤底筋群。衰えて初めて大切さが分かる骨盤底筋群。
子供を一度産んだら、体は一生産後。長い目線での骨盤底筋ケアが必要です。
この記事をきっかけに、運動をして骨盤底筋群をケアするお手伝いができたら嬉しいです。
私は、妊娠中&産後すぐの方向けの運動プログラムや、ママライフを元気に機嫌よく過ごしたい方のためのコミュニティなどを運営していますので、気になったらぜひのぞいてみてくださいね!
▶妊娠中&産後すぐの方向け:The Best Shapeマタニティ&リペア
▶おうちで運動したいママ向け:The Best Shape Mama Life
※尿漏れには様々な原因がありますので、全身運動が必ず治癒を保証するものではありません。医師の指導のもと、運動を進めるようにしましょう。
<参考文献>
1. NY Post. You’re Doing Kegels Wrong – Elevator Method
2. Katy Bowman. Move Your DNA
3. Renew Health. Beyond Kegels
4. Stanford Medicine. Low-impact yoga and exercise found to help older women manage urinary incontinence
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