こんにちは!産前産後フィットネストレーナーのYUMIです。
腹直筋離開(Diastasis Recti)という言葉を知っていますでしょうか?
妊娠・出産を経験する女性なら誰にでも起こりうる症状です。
多くの女性が、産後すぐにお腹を凹ませようとしてクランチやプランクなどの「腹筋運動」をがんばってしまいます。
しかし、腹直筋離開が治癒していないと、「腹筋運動」が効果がないどころか、腰痛や骨盤痛などの長期的な問題にも繋がりかねます。
今回は、妊娠・出産を経験する女性みんなに知ってほしい腹直筋離開について、徹底的にまとめました!
妊娠中・産後に起こる腹直筋離開って何?放っておくとどうなるの?
腹直筋離開とは何か?
腹直筋離開を理解するには(おっと失礼)、まず腹部の筋肉の構造を知る必要があります。
私たちがいわゆる「腹筋」として認識している筋肉は、腹直筋のことです。
腹直筋は右側と左側があるのですが、その真ん中に「白線」という結合組織が張り巡らされています。
よく「腹筋が割れる」と言いますが、私たちの腹筋は元々割れていて、上に脂肪が載ると腹筋が割れているように見えなくなるんですね。
腹直筋離開とは、左右の腹直筋をつなぐ白線が引き伸ばされて、間に不自然な隙間ができてしまうことです。
妊娠中に赤ちゃんが大きくなるにつれて、体が赤ちゃんを入れるスペースを作ろうとするんですね。
妊娠中にはよく起こる症状ですが、肥満によっても発症することがあります。
ですので、妊娠していなくても肥満であれば、男性でも女性でも腹直筋離開のリスクがあります。
腹直筋離開はシースルーのヨガパンツのようなもの
腹直筋離開は単なる腹直筋間のギャップと思われがちですが、腹直筋が繋がっている「白線」が引き延ばされてしまうことなのです。
赤ちゃんが大きくなったり、皮下脂肪が増えていくことで、白線が通常以上に引き延ばされ、薄くなってしまう。
イメージで言うと、シースルーのヨガパンツのようなものです。
立っている時は普通に見えても、かがんでお尻を突き出すと、パンツラインが透けて見えてしまうヨガパンツってありますよね。
腹直筋離開をした白線もそんな感じです。
ただ単にギャップができるのではなく、白線が損傷しているようなものなのです。
腹直筋離開があるとどうなるの?
腹直筋離開を放置しておくと最も困るのが、腹部の力がうまく使えなくなることです。
腹部の力が使えなくなると、逃げ場を無くしたプレッシャーが他のところにかかることになります。
その重荷を背負いがちなのが腰の筋肉。
腹部と背部の筋肉は、拮抗筋といって、互いにサポートし合うことで背骨や内臓の重みを支えています。腹部の筋肉が使えない分、腰に負担がかかります。そのため、腰痛が発生しやすくなるのです。
また、腹直筋離開がある女性は、腹部や骨盤まわりの痛みが出やすいことがわかっています(1)
他の研究では、腹直筋離開のある66%の人が、骨盤底機能不全の何かしかの症状があるとのこと。骨盤底機能不全とは、尿漏れ、便漏れ、ガス漏れ、骨盤臓器脱、骨盤痛、性交痛などです(2)。
こういった症状は、骨盤底筋群だけの問題と捉えられがちですが、腹直筋離開とも関連があるのです。
▼骨盤底筋群について詳しくはこちらを
ひどくなると腹壁ヘルニアといって、腹直筋の間から腸などが飛び出てしまうこともあります。
実は産後自然に治ることが多い腹直筋離開
こんなことを聞くと不安に思ってしまう方もいるかもしれませんが、心配ありません。
腹直筋離開は妊娠する女性には誰でもなりうる症状です。
妊娠後期には6~7割の女性に見られるというデータもあれば、100%の女性に見られたというデータもあります(3,4)。
ほとんどの妊婦が腹直筋離開になり得る上、自然に治癒するケースがほとんどです。特別な治療をしなくても、多くの場合、産後6~8週間で自然に治癒することがわかっています (5)。
ある研究では、産後直後に腹直筋離開があった人に、産後6ヶ月後に再測定したところ、7~8割の人は特に治療はせずとも治っていました。また、腹直筋離開がある人でも、腰痛や骨盤痛との関連性はみられませんでした(4)。
腰痛があるからといって腹直筋離開が原因とは限らないし、腹直筋離開があるから腰痛になるとは限らないということです。
腹直筋離開とは妊娠中に起こっても不思議はない症状ですが、産後の治り具合の経過には注意が必要です。
なかなか治らない場合や気になる症状がある場合、自分ではよくわからない場合は、専門家に診てもらうようにしましょう。
実際のところ、本当に腹直筋離開があるかどうかは超音波で見てみないと正確には分かりません。
海外では骨盤底機能や腹直筋離開について、専門的に診てくれるフィジオセラピーが普及していますが、日本では追いついていないのが現状のようです。
整体院などで診てくれるところもありますので、近くにかかれるところがないか確認してみてください。また、私のおすすめのクリニック(関東圏内)もこちらにまとめています。
腹直筋離開になりやすい人
以下が、腹直筋離開になるリスクの高い人です(6)。
・2人目以降出産
・高齢出産(35歳以上)
・巨大児
・体重が増えすぎた場合
・帝王切開
その他、上の子がいる場合や、育児を手伝ってくれる人がいない場合、弱まった腹部に負担をかけることになり、腹直筋離開のリスクが上がるとも言われています。
また、妊娠中の運動不足も腹直筋離開のリスクになるのとこと。
自分の努力ではどうしようもないことがリスクになることもありますが、妊娠中に運動を続けることで、胎児が巨大になったり体重が増えすぎるリスクを減らすことができます。
妊娠中の運動にはこんなメリットもあるんですね。
腹直筋離開のセルフチェック方法
腹直筋離開があるかどうかは、自分でもチェックできます。
セルフチェックの仕方を説明していきます。
1.膝を立てて座り、お腹とズボンをまくり上げ、へその上下を触れる状態にします。
2.まずはへその指2本上、へその真上、へその指2本下に指を押し当て、深く奥まで押せてしまえそうな部分がないか確認します。
内臓が触れてしまいそうな感覚がある部位があったら、メモしておきます。
3.実際に腹直筋の間のギャップがどれくらいあるか見ていきます。指を押し当て、頭を軽く上げます。指の爪は脚の方向を向いています。これでへその指2本上、へその真上、へその指2本下に何本指が入るか見ていきます。深く押せそうなところがないかも合わせてチェックします。
注意点:このように肩から頑張って上げる必要はありません。そっと頭を上げるだけでOK。
腹直筋離開は、白線の全てが等間隔で開くというわけではなく、場所によって広がり方は異なります。
特におへその周りは開きやすく、別の部分では指2本しか入らないのに、おへそ周りでは4本入ってしまうということはよくあります。それ自体は異常ではありませんので、安心してください。
専門的には、指2本で正常という認識があります。
しかし、隙間が開いたままでも、白線の強さが戻っていれば異常がないことがあります。
逆に、隙間はないのに痛みなどの症状があるという人もいます。
指が何本入るかという点に加えて、深く押せてしまいそうなところがないかを見るようにしましょう。
どのくらいの頻度でチェックすればいい?
出産直後であれば、産後2週ごろから、2週間に1回セルフチェックをすることをおすすめします。
チェックしたらメモをして、2週間後にどれくらい変わったか比較してみましょう。
自然に治癒する目安とされる8週までチェックを続け、症状に改善が見られなかったり、またはどこかに痛みがあるようであれば、専門機関に診てもらうようにしましょう。
繰り返しますが、本当に腹直筋離開があるかどうかは超音波で筋膜の状態を見てみないと分かりません。自分では判断がつかないという方は、専門家に相談しましょう。
まとめ
腹直筋離開は妊娠・出産を経験する方なら誰にでも起こりうる症状です。
ほとんどの場合、特段何もしなくても自然に治癒していきます。
ですが、お腹を早くへこませようとして、産後間もなく腹筋運動を頑張ってしまうと、腰痛や骨盤の痛み、骨盤底筋群の機能不全などにつながることがあります。
産後数ヶ月はゆっくり過ごした方が良いといわれるのは、このためでもあるんですね!
ですので、産後のダイエットは急がず、自分はけが人のつもりで体をいたわってあげるようにしましょう。
育児は目まぐるしく休む時間なんてない!という方もいらっしゃるかもしれませんが、できるだけ赤ちゃんと一緒に横になってまったりする時間を作ってあげてくださいね!
1. Meredy A. Parker, et al. (2009) Diastasis Rectus Abdominis and Lumbo-Pelvic Pain and Dysfunction-Are They Related?
2. Theresa M. Spitznagle, et al. (2007) Prevalence of diastasis recti abdominis in a urogynecological patient population
3. Jill S Boissonnault, Mary Jo Blaschak. (1988) Incidence of Diastasis Recti Abdominis During the Childbearing Year
4. Fernandes da Mota PG, et al. (2014) Prevalence and risk factors of diastasis recti abdominis from late pregnancy to 6 months postpartum, and relationship with lumbo-pelvic pain.
5. Coldron Y, et al. (2008) Postpartum characteristics of rectus abdominis on ultrasound imaging.
6. G. Candido, et al. (2005)Risk factors for diastasis of the recti abdominis
7. Katy Bowman. (2015) Diastasis Recti: The Whole-Body Solution to Abdominal Weakness and Separation