こんにちは!
産前産後フィットネストレーナーのYUMIです。
この記事では、妊娠中・産後の女性にとって、と~~っても大事な「骨盤底筋群」について解説していきたいと思います。
「骨盤底筋群」は目立たない筋肉ですが、女性のクオリティ・オブ・ライフを左右する大切な筋肉です。
骨盤底筋群については、妊娠・出産する女性なら一般教養にすべきです!それくらい重要!
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骨盤底筋群って何?妊娠・出産をする女性なら知っておきたい骨盤底筋群の役割
骨盤底筋群とは、どこにある筋肉?
骨盤底筋群は漢字が5つ並ぶのでなんとなく難しい印象があるかもしれません。
骨盤底筋群とは、お股の間にある筋肉です。
女性であれば、尿道があり、膣があり、肛門があり、この周りを囲んでいるのが骨盤底筋群。
英語では、骨盤底筋群のことを「pelvic floor muscles(ペルビック・フロア・マッスルズ)」と言います。
pelvicは「骨盤の」という意味で、floorは「床」です。
「骨盤の床」と考えるとイメージがつかめますでしょうか。
こちらは骨盤を上から見た図です。
骨盤底筋群は暗く塗りつぶされている部分です。
骨盤の中には、膀胱、子宮、直腸といった臓器が入っていて、骨盤底筋群がこれを支えています。
もう少しクローズアップすると、骨盤底筋群は複数の筋肉から成っていることが分かります。
一つの筋肉が独立して動くことはなく、この部分の筋肉や結合組織が連動して機能します。
骨盤底はトランポリンのようなもの
骨盤底筋群の特徴を「トランポリン」に例えてみるとわかりやすいかもしれません。
トランポリンには布の部分とばねの部分があり、その二つがあって初めて機能しますね。
骨盤底も同じように、布の部分が筋膜で、ばねの部分が筋肉です。
骨盤底は、トランポリンのように弾力を持っている必要があります。
固すぎても伸びすぎていても、うまく機能することはできません。
骨盤底筋群の役割とは?
普段は意識することのないこの筋肉ですが、色々な機能があります。
主に4つの大切な機能について説明していきます。
1.内臓サポート機能
一つ目は、内臓サポート機能です。
骨盤低筋群は、骨盤底の中に入っている子宮、膀胱、直腸といった内臓を支えています。
また、お腹と背中の筋肉と連動して、胃や肝臓、小腸や大腸といった内臓の重みも支えています。
特に妊娠時は、子宮の重さは赤ちゃんや羊水や胎盤で5 kg近くなりますから、骨盤底筋群はいつも以上に負荷がかかっていることになります。
2.排泄のコントロール
二つ目は、排尿や排便をコントロールすることです。
骨盤底筋群は排尿や排便、おならのタイミングを調節してくれます。
3.セックス
三つ目は、セックスです。
性的刺激を得たり、気持ちいいと感じるのはこの部分です。
オーガズムというのは、実は骨盤底筋群の痙攣なんですね。
4.体幹の安定
四つ目は、体幹の安定です。
骨盤底筋群は、お腹と背中の筋肉と連動して、背骨を支えています。
腰痛や肩こりは、実は骨盤底筋群の機能低下により、他の部分に負担がかかることから生じている場合もあります。
骨盤底筋群の働きが弱まるとどうなる?
骨盤底筋群がダメージを受け、正常な機能が出来なくなることを骨盤底筋群機能不全といいます。
これは、想像以上に生活全体にネガティブな影響を及ぼします。
骨盤底筋群機能不全は、出産経験のある女性たちをひそかに悩ませています。
骨盤底筋群機能不全の兆候と症状は、大きく分けて4つあります。
2.排便系…便漏れ、ガス漏れ(おなら)、便秘、排便時の痛み、痔
3.骨盤臓器脱…膀胱瘤、直腸瘤、子宮脱、膣脱、お腹の中が下がってきているような感覚
4.骨盤痛…臀部、腰、尾てい骨、仙腸関節の痛み、性交痛
中でも最も多くみられるのは、尿漏れです。
妊娠中または産後に、笑った時、くしゃみや咳をした時、ジャンプした時、しゃがんだ時などに、コントロールできない無意識な漏れを経験したことのある人も少なくないのでは。
これは、骨盤底筋群の機能低下が大きな原因です。
妊娠・出産で骨盤底筋群はどうなるの?
妊娠と出産により、骨盤底筋群は大きな影響を受けます。
妊娠中の骨盤底筋群
カバンの中身が重ければ、底面に負荷がかかって、布がしなりますね。
同じように、赤ちゃんが成長して子宮が大きくなれば、重力によって下部の骨盤底筋群に負担がかかってきます。
基本的に体が縦になっている状態の時は、骨盤底筋群は子宮の重さに耐えるために、常に収縮しようと頑張っています。
つまり、立ったり座ったりしている時は、骨盤底筋群は常に筋トレしているのと同じなのです。
「筋トレしている状態なら、骨盤底筋群が強くなっていいじゃないか」
と思うかもしれません。
ですが、大事なのは常に収縮していることではなく、伸びたい時に伸びることができ、縮みたい時に縮むことのできる弾力なのです。
輪ゴムに例えて説明します。
輪ゴムをこれ以上無理というところまでピンと張り、ハサミを入れたらどうなるでしょうか?輪ゴムは勢いよく切れますね。輪ゴムを持っている手にパチンと当たって、痛い思いをするでしょう。
一方で、輪ゴムをゆるめた状態のときにハサミを入れても、普通の糸を切ったときと同じようにチョキンと切れるだけでしょう。
これと同じように、骨盤底筋群に常に負荷がかかっている状態にあると、さらに大きな負荷がかかったときに、耐えることができません。
つまり、くしゃみや咳などで力がかかったときに、尿や便が漏れてしまうといったことが起きるのです。
妊娠後期から産後にかけて、尿漏れしやすくなったという人が多いのは、このためなんですね。
出産で骨盤底筋群が受けるダメージ
妊娠中に赤ちゃんの重みで緊張しきった骨盤底筋群は、出産によってさらにダメージを受けます。
経腟分娩であれば、骨盤底筋群は通常では考えられないレベルで引き伸ばされることになります。
赤ちゃんが出るときに会陰切開をしたり、膣が裂けてしまう人もいるでしょう。
このため、産後の体はケガをしたのと同じなのです。
産後は最低1ヶ月は寝ていなければいけない、と古くから言い伝えがありますね。これは、骨盤底筋群の治癒のためでもあるのです。
帝王切開でも骨盤底筋群に負担がかかる
帝王切開では経腟分娩のように骨盤底筋群が引き伸ばされることはありませんが、妊娠中の赤ちゃんの重みにより、骨盤底には負担がかかっています。
子宮の重さは、赤ちゃんや羊水や胎盤で、妊娠後期には5 kgにもなります。
妊娠していない時にはなかった重荷を、骨盤底筋群で支えなければなりません。
このため、帝王切開で産んだのに尿漏れなどの症状で悩まされるということは、めずらしいことではありません。
産後は骨盤底筋群の治癒が最優先
産後の体はこれだけのダメージを受けながら、出産直後に十分な休息を得ないまま、24時間フル稼働ですぐに赤ちゃんのお世話をしなければなりません。
通常、大ケガをした人にはしばらく安静にするようにいわれますよね。
産後の体も大ケガをしたのと同じくらいダメージを受けているのに、新生児という24時間ケアが必要な小さな命の責任を持たなければならないのです。
赤ちゃんにお乳を飲ませ、オムツを変え、お風呂に入れ、着替えさせ、四六時中抱っこ。傷口が治っていなくても、母乳を生産しなければなりません。手伝ってくれる人がいなければ、家事もしなければならないでしょう。これは本当に重労働です。
産後というのは特別なケアが必要な時期です。
感覚的に大丈夫と感じても、自分の知らないところで体は頑張ってリペアの作業をしています。
傷口を癒し、伸び切った筋肉や結合組織を元の状態に戻すためにフル稼働しています。
だから、産後1~2ヶ月は、激しい運動をしてはいけないと言われるのです。
最低限の家事や育児をこなしたら、後は横になって休んでいてもいいのです。
これを女性だけではなく、多くの男性にも理解してもらえたら嬉しいです。
Mandy Rempfer-Kuncio, Pelvic Floor: Function, Dysfunction, and Exercise presentation, 2019
Jessie Mundell, Core+Floor Restore Handbook, 2019