グルテンフリーを実践してみよう-私も小麦粉抜いたほうがいい？

小麦やグルテンの問題点について、前回の記事で一通り紹介しました。
知ってしまったからには、グルテンフリー生活をしてみようかな、とちょっと思い始めている方もいるかもしれません。

オンオフありつつも、4年間グルテンフリー生活をしている自分の私見も交えつつ、
・グルテン過敏症があるかどうやったらわかるのか
・グルテンとの付き合い方をどうすべきか
といったことを考えて行きたいと思います。

前編を読んでいない方はこちらから

前の投稿 ≪ グルテンフリーについて理解しよう-なぜ小麦粉は食べない方がいいの？

グルテンフリーを実践してみよう…小麦粉断ちをすべきか否か？

私のグルテン過敏症（不耐症）の症状

私の場合、グルテンが入ったものを食べると、主にこんな症状が出ます。

・膨満感（お腹にガスがたまった感じ）
・胃痛
・鼻炎
・便秘か下痢
・おならが出やすくなる（ガスがたまる）
・頭痛
・浮腫み
・口内炎
・ニキビ
・体が重い
・PMS（月経前症候群）
・思考がぼんやりする
・頭の回転が遅くなる
・気分の浮き沈み
・なんだかネガティブ思考になる

不快でしょ？(笑)

全ての症状が毎回出るわけではなく、その時のコンディションによって異なります。
ひどく症状が出るときもあれば、全く出ないときもあります。体調や、その時の生理周期、胃腸の状態にもよるようです。

また、私の場合は、スープに入っているちょっとしたクルトンや、つくねのつなぎ、揚げ物の衣、タルトのベースくらいなら、ほとんど影響を受けません。問題はドカンとラーメン、ドカンとピザ、などを食べた時です。なので、今は少量なら気にせず食べています。ただし、少量でも「小麦食べたい欲」につながることがあるので、週に2回以下に抑えるようにしています。

小麦粉と一緒に砂糖を抜いていることもありますが、不快な症状は小麦粉を抜くと改善します。以前ここに書きましたが、子供の頃から何となく弱っちかった私。でも、今は元気いっぱいです。もしかしたら、パン食が多かったからではないか？なんて思ってしまいます。

どんなにパンやパスタが美味しいことが分かっていても、毎回何らかの症状に襲われると思うと、グルテンを抜くほうが幸せでいられます。それでも食べてしまう時はありますが、かなりの確立で、後で後悔することになります・・・。

数年にわたる食生活の改善のおかげか、リーキーガットが改善しているらしく、グルテンを食べても消化にまつわる問題は少なくなってきている気がします。

でも今でもすぐにやって来る症状は、頭痛や頭のぼーっとする感じ（ブレイン・フォグ）です。頭にもやがかかっているような感覚で、思考がスローになります。頭を使う仕事をしているので、後でそのような症状に襲われると思うと、ランチにパスタや麺類を食べる気にはなれません。

その他グルテン過敏症（不耐症）によくある症状

上に書いた私が経験しているもの以外にも、グルテン過敏症によくある症状として、こんなものが挙げられます。

□疲労感
□肌荒れ
□体重増加または体重減
□胃酸逆流
□便の異臭
□貧血
□喘息
□関節痛
□湿疹
□鬱
□不安感
□ブレイン・フォグ（脳のぼーっとした感じ）

いかがでしょう？一つでも該当するものはありますか？

以前書いた慢性炎症や副腎疲労と共通する症状がありますが、小麦もこの二つと深くかかわっているので、症状が重なっても無理もありません。

どうやったらグルテン過敏症かわかる？

前の記事でも書きましたが、グルテン過敏症を正確に確認するための検査は、現時点では日本からは受けられません。

セルリアック病かIgG食物アレルギー（遅延性アレルギー）の検査なら、栄養療法（オーソモレキュラー治療）をしているクリニックで受けられます。または、USバイオテック社が出しているセルフテストを活用する手もあります。ただし、検査費は2万5千円～と高額になります。

また、日本から受けられる検査の多くは、α-グリアジンとトランスグルタミナーゼ-2（tTG-2）に反応しているかがわかるだけであって、それ以外の小麦成分に反応しているかどうかはわかりません。それに、正確な判定を受けるには、普段から小麦粉を食べていなければならず、すでにグルテンフリーの生活を続けている人には陰性が出ることがあります。

小麦の構造-グルテンフリーについて理解しよう-なぜ小麦粉は食べない方がいいの？-yumiid.com

多くのグルテン過敏症の検査で分かるのは、a-グリアジンとトランスグルタミナーゼ-2への反応のみ（赤字）

現時点で最も精度が高いグルテン過敏症の検査は、Cyrex Laboratories（サイレックス・ラボラトリーズ）というところが出しているArray 3ですが、残念ながら日本から受けることはできません。

それでも、グルテン過敏症かどうかを判断する手立てはないわけではありません。

機能性医学に従事するドクターたちの多くも、小麦をしばらく抜いてみて、また食べてみた時に反応が出るかどうかを自己判断する「除去ダイエット（エリミネーション・ダイエット）」を勧めています。

まずは4～6週間、小麦の入ったものを全て抜いてみてください。その後、パンやピザやラーメンなどをドカンと食べてみてください。不快な症状が戻れば、何等かのグルテン過敏症があることがわかります。

小麦断ちをすると禁断症状が出ることも

4～6週間といっても、小麦が入ったものはそこら中にあふれていますから、それができたら苦労しないよ！という人も多いかもしれません。

New York Timesベストセラー「小麦は食べるな！（Wheat Belly）」の著者、ウィリアム・デイビス医師によると、小麦断ちをしようとする人の30%が禁断症状を覚えるそうです。
疲労、思考力の低下、イライラ感、憂鬱な気分、頭痛など、しばらくは不快な症状に襲われるかもしれません。そして、小麦が入っているものが異様に食べたくなるかもしれません。

前回の記事でも触れたとおり、小麦の消化過程でできるペプチド（ポリペプチド）は、モルヒネの受容体にハマるので、ドラッグと同じような中毒になりやすいのです。
なので、禁断症状が出てもおかしくはありません。

また、グルテン過敏症の中でも、トランスグルタミナーゼ-6に反応する人は、精神・神経系の影響を受けやすいので、禁断症状が出やすいといわれています。

私はArray 3の検査を受けたわけではないので正確なことは分からないですが、小麦を食べると頭がぼーっとしたり、気分の浮き沈みなど、精神系の症状が出やすいです。

今でも、ケーキやパンなどをドカンと食べた後2~3日は、どうしようもない「小麦を食べたい渇望感」に悩まされることになるのは、これが関連しているのかもしれません。何日かすると、全く興味がなくなるのですが、数日間は苦しむことになります・・・。

禁断症状はつらいですが、他に没頭できることを探して気をそらすか、スッキリ小麦断ちした自分を思い描いて踏ん張るしかないです(笑)。

いわゆる「グルテンフリー製品」を選べばいいわけではない

グルテンフリー生活を始めると「グルテンフリー製品」を買わなきゃいけないのかと思われがちですが、いわゆるグルテンフリー製品にも色々と問題があります。「グルテンフリー」と書いてあるとヘルシーなイメージがありますが、実は白砂糖やトランス脂肪酸、その他添加物がふんだんに使われていることがあります。

グルテンフリーと書いてあるだけで高く売れるので、小麦粉の部分をとうもろこし粉や米粉に変えて売り出している「グルテンフリー・ジャンクフード」も少なくありません。

また、小麦粉の代替で使われるとうもろこし粉、タピオカ粉、米粉なども、血糖値が上がりやすいので、グルテンフリーとはいえ血糖値スパイクを起こしていたら意味がありません。

しかもグルテンフリーというだけで高かったりするので、実際私はほとんど買いません。

小麦粉抜いてるなら何食べるの？と言われますが、他にも食べるものいっぱいありますよ！

私は、基本は野菜をがっつりと。肉、魚、卵、発酵した大豆食品、オリーブオイルやココナッツオイルなどの良質な油に、お腹に余裕があったら米と果物を食べています。

加工されたものではなく、食べ物の形をしている食べ物（ホールフーズ）を食べればいいのです。

グルテンフリーに関してよくある反論

次に、グルテンフリーに関してよく聞く反論を見て行きたいと思います。

１．グルテンフリーをしている人は、そうでない人に比べ、○○の栄養素が足りていない

こういったニュースがよくTwitterでバズったりしていますが、ここで見逃しがちなのが「グルテンを抜いた代わりに何を食べているのか」という点。

・グルテンフリーとパッケージに書かれている製品を食べている
前述の通り、いわゆるグルテンフリー製品はとうもろこし粉、タピオカ粉、米粉、大豆粉などで代用されていることがあります。こういったものは加工のしかたによっては小麦粉よりも血糖値が上がりやすかったりします。また、とうもろこしや大豆に不耐症がある人もいます。

・グルテンフリーにした結果、特定の食品の摂取量が増えている
小麦粉の代わりに何か特定の食品に偏っても、別の問題が起こることがあります。

例えば、乳製品。グルテンに反応する人は乳製品にも反応することが多いので、逆に症状が悪化する人もいます。特に乳タンパクのカゼインは、グルテンと交差反応します。カゼインを摂取すると免疫システムがグルテンだと思ってアタックしてしまうのです。

肉ばかりでも、オメガ6の油が優勢になって炎症を起こします。また、輸入肉にはホルモンの問題などもあります。
かといって野菜ばかりで肉や魚が不足すれば、たんぱく質やビタミンB12の欠乏症になりえます。

小麦粉から摂れる栄養素は、別の食材から十分に摂ることができます。

グルテンフリーの人はミネラルうんちゃら、ビタミンうんちゃらが欠如、というニュースを見かけたら、対象グループは何を食べていたのか注意深く見てみてください。代わりに何を食べていたか見ずに、グルテンフリーのせいにするのはあまりに短絡的です。

２．グルテン過敏症じゃない人がグルテンフリー生活をするのは良くない

グルテンフリーはただの一時的な「ダイエット」に過ぎないという人も多いのですが、自分が「グルテン過敏症じゃない人」かどうかは、小麦粉を一定期間、徹底的に抜いてみないとわかりません。事実、小麦粉を排除することで、長年悩まされていた不快な症状が嘘のように改善する人も少なくありません。

現在のグルテン過敏症やセルリアック病の検査には偏りがあり、小麦粉のどの部分に反応しているのか、正確に知るすべはありません。セルリアック病ですら、消化まわりの症状が出ない人には、かなりの確率で誤診断がされているともいいます。

テストで陰性だったからといって、グルテン過敏症でないという判断をするのは、時期尚早です。

なので、まずは4～6週間、完全に小麦粉を排除して、症状が改善されれば、グルテンに何らかの過敏症があるということです。

３．グルテンフリーをしても痩せるわけではない＆糖尿病になる

血糖値をはね上げる他の物を食べてりゃそりゃそうだ！と言いたいです。

いわゆるグルテンフリー・ジャンクフードに置き換えたからといって、痩せるわけではありません。グルテンフリーでもパスタはパスタ、パンはパン。血糖値を上げすぎてインスリンが出れば、脂肪をため込みます。栄養素が不足すれば太る人もいます。

▼血糖値とインスリンについて

Health Literacy

血糖値についてきちんと理解しよう。インスリン抵抗性や低血糖とは？

反論の背景にあるものを見極めよう

今後もグルテンフリーの認知が広まるにつれ、グルテン不耐症なんてものはない、グルテンは体にいい、といった研究がたくさん出てくると思います。今までにもありましたが、これからもたくさんメディアに出てくるはずです。

でも一つ覚えておいてほしいことは、小麦を使ったものを販売している大企業は、お金を持っているということ。莫大な資金を出せば、企業にとって有利な研究報告を出版してくれる研究機関を見つけるのは難しくありません。

砂糖業界でも同じことが起こっています。1960年代に、シュガー・リサーチ・ファウンデーションという協会が、ハーバードの研究者に5万ドルを支払い、砂糖よりも油が心臓病に関与しているというレポートを出させました。これにより油が悪者にされ、世界中に「低脂肪ムーブメント」が起こり、「砂糖は脳の栄養」というプロパガンダが広まることになりました。でも近年では、砂糖の摂りすぎがいかに体に害かは、常識になりつつあります。

小麦が入ったものは儲かります。原価わずか数円で、数百円の製品が売れますから。
でも人々がグルテンフリーを実践したら、儲からなくなります。それを阻止するために手段を択ばない企業は、無数にいることを覚えておいてほしいです。
消費者として賢くなりましょう。

最終的な小麦粉との付き合い方は、自分で決めるべし

小麦断ちをするのは確かに辛いものです。大好きなドーナッツやクレープやパンやピザやラーメンが食べられなくなるのですから。特にケーキなどの甘いものは、誕生日やお祝いごと、お土産など、嬉しい幸せな記憶と結びついているからこそ、難しいところがあります。

それに、これだけたくさんグルテンを使ったものを扱う企業がある以上、小麦を摂らない人が増えれば増えるほど、倒産する会社や失業する人が増えるかもしれません（その分、体に良いものを使った製品を作る会社が増えてくれればいいな…）。

でも小麦断ちをする価値は十分にあると思います。
食後の不快な感じや、頭のぼーっと感。気分の浮き沈みや肌のかゆみ。止まらないおならやニキビもさよなら！気分爽快！最高です！
そもそも長年小麦粉中心の生活をしている人は、デフォルトで体が重い状態なので、自分の体がお疲れということにすら気づかない場合が多いのです。こればっかりは、小麦をしばらく抜いてみないと体感できません。

それに、小麦を抜いても、他にも美味しい代替品が沢山あります。小麦を食べられなくなったからといって、美味しいもの全てとさよならするわけではありませんよ。

でも私はここで、「小麦は二度と食べるべからず！」とは言いません。
自分が気づいていなくても、グルテン過敏症な人は数え切れないほどいると思います。
こんなお悩みも、あんなお悩みも、グルテンを抜けば治るのにな、と思ったりもします。

でも「奪われている」というメンタリティでグルテンフリー生活をすると、それがストレスになって、結果グルテンを抜くことよりも体に悪影響が及ぶこともあります。

こればっかりは、その人が自分の健康において、人生において、何を達成したいかによると思います。

・どうしても、何がなんでも痩せたい！
・仕事において誰よりも生産性を上げたい！

そういう高い目標がある人は、すかさず抜くべきだと思います。

でも、

・頭痛や便秘や下痢は直したいけど、おやつの楽しみはやめたくない。
・お腹周りの肉は落としたいけど、ラーメンを食べられなくなるなら死んだ方がまし。

という方は、無理して小麦断ちする必要はありません。

最後に一つ、アメリカの自然療法医のブルック・ケラニック医師の患者さんの、グルテン断ちストーリーをお話しします。

その患者さんはまだ30歳なのに、ひどい胃酸逆流に悩まされていて、寝ている時や運動の時に困っていたそうです。腕立て伏せをしようものなら、胃酸が逆流してきて1セット終わらせられない。そんな状態でした。また、湿疹や皮膚がんらしきものもあり、ご飯を食べる度に胃痛に襲われていました。

彼女の前の担当医がα-グリアジンのテストをしたところ、陰性だったので、グルテンは食べ続けていたのですが、ブルック医師はグルテンを抜くように強く勧めます。30日間なんとかグルテン断ちをすると、体重は7キロもストーンと落ち、湿疹は治り、胸やけや逆流はすんなり治ったそうです。