妊娠超初期は運動したらいけない?運動と流産の関係性と、運動を続けたい妊婦さんが気を付けること

妊娠・出産

こんにちは!
妊娠中&産後専門フィットネストレーナー&ヘルスコーチのYUMIです。

今回は妊娠超初期の運動についてお話ししていきます。

妊娠が判明してまもない頃、命を授かった喜びとともに多くの不安が押し寄せますよね。妊娠がわかる時期によっては、初めての産婦人科受診まで数週間というケースもあります。
「病院に行くまでの間、今まで通りの運動を続けても大丈夫?」と心配になる方もいるのではないでしょうか。

今回は、そんな妊娠超初期の運動に関する疑問について、最新の研究や医学的ガイドラインを交えながら、分かりやすく解説していきます。

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妊娠中の運動がもたらすメリットとは?

「妊娠すると運動はしてはいけない」、「妊娠中は絶対安静」というイメージはありませんか?
初めての妊娠の場合、人から聞いた話やネットの情報で不安になることも多いですよね。

実は、妊娠中の運動にはたくさんのメリットがあることをご存知ですか?

  • 妊娠糖尿病のリスク低減
  • 腰痛の軽減
  • 産後の回復促進

など、その効果は数えきれません!

アメリカ産婦人科学会(ACOG)も、妊娠中の運動は「してもいい」ではなく、「したほうがいい」と推奨しています。[1]

▶関連記事:妊娠中にしていい運動・してはいけない運動!最新のガイドラインは何と言っている?

運動しては良いとわかっても、気になるのは妊娠が発覚してから初診までの過ごし方ですよね。

「医師からまだ運動の許可が出ていないのに、自己判断で動いてもいいのか…」
「どの程度運動しても良いのか…」
不安に感じるのは当然のことです。

特に、日頃から運動習慣がある方にとっては、この期間に体を動かせないことが逆にストレスになる場合もあります。

妊娠超初期に運動をする前の注意点

「妊娠中の運動はしてもいいのなら、早速今日から始めよう!」と思った、そこのあなた!

妊娠超初期の運動について詳しくお話する前に、まず注意点を確認しておきましょう。

※この記事における妊娠超初期とは、妊娠4週・妊娠5週・妊娠6週くらいまでの胎嚢や胎児の心拍が確認できていない時期を指すこととさせていただきます。

以下に当てはまる場合は、自己判断で運動をせず、必ず初診を待って医師に相談してください

自己判断で運動をしない方が良いケース

  • 妊娠前は全く運動していなかったのに、新しい運動を始めようとしている。
  • 今までハードな運動をしていたので、そのまま続けていいか不安がある。
  • 腹痛、不正出血、体調不良がある。

このような不安がある場合は、運動を継続したり、新たに始めたりすることは避けてください。

「運動すると流産する」は本当なのか?

妊娠超初期の方が運動を始める際に最も恐れることの一つが、「運動すると流産するかもしれない」という不安ではないでしょうか。

このイメージは現代でも根強く残っていますが、実際のところはどうなのでしょう?最新の研究結果を確認してみましょう。

2023年に発表されたある研究では、「低〜中程度の運動であれば、流産リスクは上がらない」と明確に述べられています。

この研究は、3,728人の妊婦さんを対象に13の臨床試験を実施しており、非常に信頼性が高いです。[2]

さらに、米国産科婦人科学会(ACOG)も「妊娠中の運動は、妊娠糖尿病や帝王切開のリスクを下げる可能性がある」と公式に発表しています。

なぜ「運動=危険」というイメージが広まっているのか?

「妊娠中の運動=危険」というイメージが根強いのは、すべての運動を同じものとして捉える傾向があるからです。

しかし、高負荷の運動と、中〜低負荷の運動は全く別物です。

高負荷の運動は、フルコースのフレンチを食べた後にビュッフェを食べるようなもの、中〜低負荷の運動は、栄養バランスの取れた和食や心も体も元気になるスイーツのようなものなので、体への影響は全く異なりますよね。

高負荷の運動については、流産と関係があるというエビデンスは存在します。

例えば、ある古い研究では、「アスリート並みに週7時間以上の高強度トレーニングを行っていた女性は、妊娠超初期の流産リスクがわずかに高まった」と報告されています。

また、マサチューセッツ大学の研究では、「流産の経験がある女性においては、高負荷の運動が化学流産*1を高める傾向にある」と示唆されています。[3]

この研究での「高負荷の運動」とは、「強い身体的負荷を伴い、通常よりもはるかに激しく呼吸するような活動」と定義されています。具体的には、”HIITトレーニング”や”クロスフィット”、”ダッシュ”など、終わった後に肩で息をするような運動だと記されています。

「一度胎嚢が確認された妊娠においては、高強度の運動でも流産との関連性はない」とも示されていることから、「高負荷の運動は、着床や妊娠超初期の段階に悪影響を及ぼす可能性はある」ことがわかります。

一方で、「中程度の運動*2」や「歩行*3」は、妊娠超初期においても流産との関連性がないとされています。

以上から、妊娠が発覚してから初診までの間、運動を全く行わないのではなく、日常生活を送ったり、ウォーキングや軽い運動をしたりすることは、流産のリスクとは関係がないと考えられます。

*1 化学流産:妊娠検査薬で陽性反応が出たものの、超音波検査で胎嚢が確認される前に妊娠が自然に終わってしまうこと。

*2 中程度の運動:適度な身体的負荷を伴い、通常よりもやや激しく呼吸するような活動

*3 歩行:職場や家庭での歩行、移動のための歩行、さらに、娯楽、スポーツ、運動、余暇のために行う歩行

流産のリスクを高めるのはストレス!

実は、流産のリスクを実際に高めてしまうのは運動よりもストレスです。

多くの論文で、「ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増えると流産のリスクが高まる」ことが示されています。

ある研究では、受胎後最初の3週間における母体のコルチゾール値が高い場合、流産の可能性が高まることが示されました。また、高コルチゾールにさらされた妊娠は、自然流産の発生率が2.7倍高いことも確認されています。[4]

つまり、不安になりすぎることでコルチゾールが増えるので体に良くないということなのです。

「この運動、赤ちゃんによくないかも?」

「いっぱい歩いちゃったし、いっぱい上の子抱っこしちゃったけど、赤ちゃんに負担かけちゃったかな?…どうしよう…」

と不安に思っていることで、コルチゾールが分泌されてしまっている可能性があります。

ですが、安心してくださいね!適度な運動が、むしろコルチゾールを下げてくれることが多くの研究で分かっています。[5,6] 

運動がストレス解消につながるとよく言われますが、科学的に証明されていることなんですね。

妊娠中に安心して運動するために気を付けるポイント

妊娠中も体を動かすと決めたら、「自分は赤ちゃんにとって良いことをしているんだ」と自信を持ってください。

そのためには、妊娠中の運動は全て「してはいけない」ではなく、「安心して、自分の体の声を聞きながら、心地いいと思えることをする」ことをおすすめします。

安心して妊娠中の運動をする上で気を付けるポイントは、下記の3点です。

  • 無理する前に休憩する。
  • 苦しくなる前に止める。
  • 筋トレでプッシュするのが好きでも、「あと3回くらい余裕でできる」程度でやめる。

ですが、怖いからといって運動を全くしなくなる必要はありません!

「0か100」と極端になるのではなく、「20〜50程度の運動」を探してみてください。

例えば、0が寝た状態、100が「ぜーはー」と息切れするような激しい状態だとすると、その中間またはちょっと下くらいの運動を目指すイメージです。

「心地よいと感じられる軽い運動」をゼロにしないことが、体にも心にも良い影響をもたらします。

「心地よいと感じられる軽い運動ってどれくらいが適切なの…?」と悩むかもしれません。

例えば、以下のような運動がおすすめです。

  • 椅子に座る時の動きをスクワットとしてやってみる。
    バーベルの使用はお休みして、自重スクワットなら大丈夫かもしれません。
  • 呼吸を整えるストレッチやヨガ、ウォーキングなどをしてみる。
    心拍数が上がりすぎない運動は、コルチゾールを下げる働きがあるので、適度に行いましょう。

妊娠中の運動についてもっと知りたいという方は「妊婦さんの筋トレガイド」をダウンロードしてみてください!妊娠中に行っていい筋トレ、行ってはいけない筋トレについて分かりやすくまとめています。

また、「具体的に30分くらいのレッスンを受けてみたいな」という方には、Best Shape マタニティ&リペアがおすすめです。

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妊娠超初期の運動は、自分の身体と体の声を聴きながら

妊娠中の運動の可否については、それぞれの妊娠状況や妊娠前の運動習慣によって変わります。

私は医師ではないため、妊娠超初期のあなたに「はい!運動していいですよ!」と断言することはできません。

今日ご紹介した研究内容などを元に、あなたの体と気持ちに耳を傾けて判断してほしいと思います。

ご自身の状態を見つめながら、不安がある際には医師に相談して運動に取り組んでくださいね!

<参考文献>
1. The American College of Obstetricians and Gynecologists. (2015, reaffirmed 2019) Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period
2. Lindsey M. Russo, 他. Physical activity and incidence of subclinical and clinical pregnancy loss: a secondary analysis in the effects of aspirin in gestation and reproduction randomized trial
3. Rubén Barakat, 他. Influence of Physical Activity during Pregnancy on Maternal Hypertensive Disorders: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.
4.Pablo A. Nepomnaschy, 他. Cortisol levels and very early pregnancy loss in humans. 
5. Matias M Pulopulos, 他. Association between changes in heart rate variability during the anticipation of a stressful situation and the stress-induced cortisol response
6. Ewelina Czenczek-Lewandowska, 他. The Role of Physical Activity in the Reduction of Generalised Anxiety Disorder in Young Adults in the Context of COVID-19 Pandemic

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