こんにちは!ヘルスコーチのYUMI (@yumiid/@you_me314)です。
一日に必要なたんぱく質の量ってどれくらいなんですか?という質問をよく受けます。
たんぱく質は体の中の全ての細胞を作り、古い細胞を修復するために欠かせない栄養素ですね。
酸素や栄養素を運搬する役割を果たし、免疫力を向上させたり、ホルモンや消化酵素をつくる元になったりと、健康を保つためには不可欠なものです。
さらに、糖質よりも満腹感が持続し、血糖値をコントロールしてくれるので、ダイエットを頑張っている人の中では、たんぱく質を多めに摂るのは常識になりつつあります。
しかも、たんぱく質は脂肪や糖質と違って体にためておけないので、毎食取ってあげるのが理想です。
でも、たんぱく質が必要なのはわかっているけど、毎日どれくらいの量を摂ったらいいの?という疑問がわいてきますよね。
これについては色々な議論が交わされています。
実際のところ、あなたの年齢、性別、筋肉量、活動量、妊娠しているか否か、授乳しているか否か、遺伝などで、一日に必要なたんぱく質の量はかなり変わってきます。
この記事では、たんぱく質の必要量をめぐって交わされている議論のあれこれや、自分はたんぱく質 の量が足りているのかとりすぎなのかどうしたら分かるのか、といったことを見て行きましょう!
一日に必要なたんぱく質の量ってどれくらいなの?
1.体重×0.8~1g説
多くの公的機関や研究機関が目安として発表している摂取量は、成人で体重×0.8~1gです。
厚生労働省が発表している成人のたんぱく質摂取推奨量は、男性は60g、女性は50g。
男性の平均体重が60~75㎏、女性の平均が50~62.5kgの範囲と想定した場合、体重×0.8~1gとなります。
米NIH(National Institute of Health:アメリカ国立衛生研究所)も、体重×0.8gを推奨しています。
ただし、これは体重以外の要素は加味していないので、実際にはこれでは足りない説と、多すぎる説があります。
2.それじゃ足りない説
体重×1gは最低限の必要を満たしているだけで、全く足りないという主張をする人もいます。
例えば、ボディビルダーやパワーリフターなど、強度の高い筋力トレーニングをする人は、体重×1.6~1.8gかそれ以上が理想とされています。
また、長距離走などの持久力トレーニングをする人は、体重×1.2~1.4gが目安とされています。
激しい運動をしている人に加え、逆に運動を全くしていない人は、たんぱく質の利用効率が悪いため、体重×1g以上必要なのではないかといわれています。
高齢者も一般的に活動レベルが低く、代謝が落ちることから、たんぱく質の利用効率が悪くなる傾向にあります。その上、食事量も減るため、不足しやすくなります。
その他、妊娠中や授乳中の女性は、体重×1g以上にたんぱく質量が必要とされます。
厚生労働省とNIHそれぞれが定める妊娠・授乳中の女性に必要なたんぱく質量を載せておきます。
年齢 | 推定平均必要量 (g/日) |
推奨量 (g/日) |
---|---|---|
18~49歳女性 | 40 | 50 |
妊娠初期 | +0 | +0 |
妊娠中期 | +5 | +10 |
妊娠後期 | +20 | +25 |
授乳中 | +15 | +20 |
年齢 | 推奨量 (g/kg) |
推奨追加量 (g/日) |
---|---|---|
19~50歳女性 | 0.8 | – |
妊娠初期 | 0.8 | +1.3 |
妊娠中期 | 0.8 | +6.1 |
妊娠後期 | 0.8 | +10.7 |
授乳中(最初の6カ月) | 0.8 | +14.7 |
授乳中(次の6カ月) | 0.8 | +11.8 |
こう見ると日米でずいぶん開きがあるように見えますが・・・とにかく妊娠中、授乳中は多めにたんぱく質を摂っておいて間違いなさそうですね!
3.それじゃ多すぎる説
一方で、体重×1g以上だと多すぎるのではないかという主張もあります。
英サリー大学他が行った研究では、適度な運動をしていると栄養循環が良くなるため、たんぱく質の利用効率も良くなるとのこと。これも活動レベルによるところがあります。
出典:Cambridge Core
軽い運動をしている人はたんぱく質の必要量が減り、全く運動をしていない人はたんぱく質の利用効率が悪いため、強度の高い運動をしている人と同じくらい必要になるとされています。面白いことに、上の図のようにU字を描きます。
ちょっと筋トレを始めると、プロテイン粉末を飲んだ方が良いのかと思いがちですよね。
私は自宅での筋トレを教えているクライアントには、極力粉末ではなく食事から摂るようにお伝えしています。なぜなら、自宅でおこなう毎日5~20分くらいのトレーニングであれば、むしろたんぱく質の利用効率が上がるため、あえて粉末でプラスする必要がないからです。
私も何年も筋トレをしていますが、プロテイン粉末を飲むのは、ジムでがっつりウェイトトレーニングを1時間以上したときか、忙しくて食事からたんぱく質が摂れなかった時です。(最近は妊娠のためピープロテインを飲んでいますが。日本で手に入るプロテイン粉末の中では断然ピーがおすすめです。)
また、たんぱく質も摂りすぎると「糖新生」という代謝プロセスを経て、脂肪に変わってしまいます。
米国の機能性医学で有名なDr.Mark Hyman(Dr.マーク・ハイマン)によると、成人が1回の食事で処理できるたんぱく質量は30g。摂りすぎた分は糖新生を起こし、エネルギーとして使われなければ脂肪に変わってしまうのです。
このため、摂りすぎると糖尿病、心疾患、がんの発症率のリスクが増加するといわれています。
知らず知らずに摂りすぎていることもあります。
肉、魚、卵、乳製品、大豆などの9種類の必須アミノ酸を全て含む「完全たんぱく質」を、計算上で必要量取っていなくても、例えば野菜とお米を一緒に食べていれば、それぞれのアミノ酸が補いあって、体内で必須アミノ酸が合成されるということもあります。
足りなかったら足りなかったで、体は補い合うように上手くできているのです。
で、結局どうしたらいいの?
色々な議論があると混乱しますよね。
最初に書いたように、たんぱく質の必要量は個人差があり、年齢、性別、活動レベル、筋肉量、遺伝などによります。
こういうとつまらない答えに感じるかもしれませんが、成長期の運動部の男の子と、閉経後の中年主婦が、同じたんぱく量を必要としているわけがありませんよね^^;
じゃあ私はどうしたらいいのよ!という感じだと思うので、
・たんぱく質が足りていないサイン
・たんぱく質を摂りすぎなサイン
を参考に、調整していくのがベストかと思います。
たんぱく質が足りていないサイン
1.爪、髪、肌のトラブル
爪、髪、肌は、いわゆる最後に栄養が行くところ。臓器、骨、筋肉など生きていくのに不可欠な部分に栄養が足りていなければ、そちらが最優先され、爪、髪、肌は後回しにされてしまいます。爪が折れやすかったり、白っぽかったり、押しても白っぽいままでピンク色に戻らない。抜け毛、薄毛、肌のくすみや乾燥なども、たんぱく質が足りていないサインです。
2.渇望感、食欲が止まらない
糖質中心の食生活になっていて、血糖値が乱れていることが関係しています。たんぱく質は血糖値を急上昇させにくくしたり、満腹感を与えてくれるので、不足しているとこういった症状が現れることがあります。もっとも、たんぱく質をしっかり摂っていても、糖質も同じくらいしっかり摂っていれば同じ症状が現れることもあるのですが・・・。
3.疲れやすい/スタミナ不足
低たんぱく高糖質の食事による血糖値の乱降下や、細胞を修復する栄養素の不足、免疫力が低下することから起こります。
4.痩せにくい
同じ低たんぱく高糖質による血糖値の乱れなどに起因しています。
5.筋肉量が増えない/減っている
筋トレしているのに全く筋肉量が増えない、もしくは減ってしまったという場合は、たんぱく質不足を疑うべし。
6.筋肉痛/関節痛/骨の痛み
新しい細胞を生成する栄養素が足りなくなるため。
7.風邪を引きやすい
免疫力の低下はたんぱく質不足も原因の一つです。
8.骨密度の低下
骨の細胞をつくるのも、たんぱく質の仕事です。
9.傷やケガの治癒に時間がかかる
新しい細胞を作る材料がなければ、治癒に時間がかかってしまいます。
10.頭がぼーっとする/集中力の低下/やる気が出ない
頭にもやがかかったような状態(Brain Fog)が続くことはありませんか。
やる気や幸福感を与えてくれたり、集中力の持続に必要な脳の神経伝達物質(ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、セロトニン)などは、特定のアミノ酸を材料にして作られています。
また、高糖質で低たんぱくの食事による血糖値の乱降下の影響で、こういった症状が出ることもあります。
たんぱく質をとりすぎなサイン
1.腎臓機能の低下
たんぱく質過多の食事は、腎臓に負担をかけます。
ひどい場合は腎機能不全、腎臓結石、腎臓病などが発症する場合もあります。健康診断で引っかかった人は、無理な糖質制限をしていないか見直してみてくださいね。
2.喉が渇く(脱水)
たんぱく質過多になると、たんぱく質に結び付いた窒素を体が排出しようとするため、余分な水分を必要とします。そのため、妙に喉が渇いたり、脱水症状に陥ったりします。脱水が原因の頭痛として現れることもあります。
3.浮腫み
腎臓に負担がかかると、体の浮腫みとして現れることがあります。
4.糖質制限しているのに痩せられない/脂肪が取れない
前述のとおり、たんぱく質も摂りすぎると糖新生を起こして脂肪に変わることがあります。糖質制限しているはずなのになかなか痩せないという方は、たんぱくと糖質のバランスを調整したり、野菜に含まれている糖質までカットしてしまっていないか、見直しが必要です。
5.疲れやすい
これは足りていないサインのところにも入っていた項目ですが、たんぱく質を摂りすぎなために肝臓や腎臓に負担がかかり、疲れとして出るケースもあります。
6.頭がぼーっとする
これも足りていないサインのところにも入っていた項目ですが、過多の場合の頭のぼーっと感は、脳にブドウ糖が不足してしまうことが原因です。これも、無理な糖質制限で、脳のエネルギーであるブドウ糖を制限しすぎていないか見直しが必要です。
7.便秘
動物性たんぱくの摂りすぎだったり、たんぱく質が良いからといってホエイやカゼインを摂っていたものの乳糖不耐症だった、といったことが原因になります。
高たんぱくの食事を!と肉ばかり食べすぎて、食物繊維が不足してしまうと便秘になりますし、体臭の原因にもなります。
たんぱく質不足や過多は、他にも色々なサインとなって現れますが、これが一例です。
ただし、こういった症状が出るのは複数の要因が重なってのこともあるので、一概にたんぱく質の量が原因とは言い切れないところがあります。あくまでも目安としてみてください。
多くの場合は、
・たんぱく質不足の場合⇒糖質中心で血糖値が乱降下する食事とセット
・たんぱく質過多の場合⇒無理な糖質制限とセット
になっています。
まとめ
体重×1g論、それじゃ足りない論、それじゃ多すぎる論、たんぱく質不足・過多の症状など色々と見てきましたが、自分のたんぱく質量が足りているか足りていないか、わかってきましたか?
忙しく仕事をしていると、朝はパンかシリアル、昼はうどんや丼もの、夜はカレーや居酒屋メシといった食生活に陥りがちです。こういった場合、大抵は体重×1gも満たしていないと思っていいでしょう。
まずは体重×1gを目指しつつ、自分の活動レベルや体調に合わせて調整してあげてみてください。
本当に最適な量は、やはりあなた自身にしか分かりえないのかもしれません。人それぞれたんぱく質の代謝は違います。少しのたんぱく質を効率よく使える体もあれば、そうでない体もあります。
何よりも自分の体の声を聴いてあげることが大切です。それは、自分の体をよく観察して、変化に気づき、微調整してあげることです。
人とは「はいこれっ!」というズバっとした答えがほしいものです。だから流行りの健康食品や食事法に走りたくなるものです。でも、私たちの体はロボットではないので、みんな一緒にはできていません。「日本人だから」とひとくくりにしたくなりますが、みんな遺伝子も違えば、環境も違えば、活動レベルも違います。それに応じてたんぱく質の利用効率も違ってきます。
何をどれくらい食べた時に、体がどんな反応をおこすかよく観察してみてください。
摂るたんぱく源によっても変わってきます。肉なのか、魚なのか、乳製品なのか、豆なのか。特定のたんぱく質に偏ってもよくないので、バランス良く取る必要があります。
そして量を増やしたり減らしたり、たんぱく源を調整して、あなたの体にとっての適量を探す。それが「自分の体の声を聴く」ということです。
これはお医者さんにも、栄養士にも、ヘルスコーチにもできません。
自分の体の声を聴いて微調整できるスキルこそが、健康のリテラシーを持つということなのだと思います。
最後は説教臭くなりすみませんが(笑)、自分に合うたんぱく質の量を模索して、もっともっと健康に!
厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要
厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2015 年版)策定の方向性 1─2 たんぱく質
National Institute of Health(NIH). Recommended Allowances of Reference Protein and U.S. Dietary Protein
The American Council on Exercise(ACE). How Much Protein Do We Actually Need?
University of Surrey, Guildford, etc. Physical activity, protein metabolism and protein requirements.
Dr.Mark Hyman(2016). Eat Fat, Get Thin: Why the Fat We Eat Is the Key to Sustained Weight Loss and Vibrant Health
Joseph Mercola(2017). Fat for Fuel: A Revolutionary Diet to Combat Cancer, Boost Brain Power, and Increase Your Energy