グルテン、ソイならびに健康界で議論になっているもの、それは乳製品(dairy)です。このブログではグルテン、砂糖、カフェインなど、世の中で大人気(?!)の食べ物のリスクについて取り上げてきましたが、今回はみんな大好き乳製品についてです。
私は昔カフェラテが好きで、毎日のように飲んでいました。でもある時、カフェラテを飲むたびにおトイレに直行していることに気が付きました。
当時は(汚い話ですが)基本的に軟便だったので、それが乳製品のせいだとかは特段思わなかったのですが、試しにブラックコーヒーに変えてみたら普通の便に戻ったので、「あぁこれは乳糖不耐症というやつかもしれないな」と気付いたというわけです。
それ以来、牛乳やミルクと名のつくものは控えるようになりました。ヨーグルトも、牛乳より乳糖は少ないにせよゼロではないので、積極的に買わなくなりました。チーズも、もともとあまり買って食べたりしないので、外食の時以外は最小限にしています。生クリームやアイスクリームは大好きなのですが、たま~に楽しむくらいにしています。
私は乳製品を食べると、こんな症状が起こってしまいます。・お腹がポコポコする・膨満感・腹痛・下痢などの消化不良・ガスっぽくなる・ニキビや吹き出物ができる・浮腫む
乳製品には乳糖の問題以外にも、アレルゲンとなるたんぱく質「カゼイン」、ニキビを増やす成長因子「IGF-1」が含まれていたり、生産の過程でホルモンや抗生物質、農薬が使われています。
現代の牛乳は、私たちのひいおばあちゃんが飲んでいたような牛乳とは全くの別物です。今お店に並んでいるのは、農薬を使われて遺伝子組み換えの穀物を食べさせられ、牛舎で育てられた牛から取られ、工場で加工された液体です。牛乳のパッケージに印刷されているような放牧で飼われている牛から搾り取られたのではありません。
乳製品を摂らないとカルシウム不足になるんじゃないの?と思われるかもしれませんが、これにもからくりがあります。
乳製品は、日常的に摂らなくてもいい食品だといえます。その理由をこれから説明していきます。
乳製品ってどうなの?牛乳やヨーグルトをよく食べる人が知っておきたいリスク
まず、乳製品といっても色々あります。日本で乳製品というと、牛から搾った乳が一般的ですが、世界ではヤギや羊の乳も日常的に消費されています。
今回の記事では、牛の乳からできた乳製品に焦点を充てたいと思います。
すなわち、こんなものです。
・牛乳
・生クリーム
・スキムミルク
・ヨーグルト
・サワークリーム
・チーズ
・ホエイプロテイン
・カゼインプロテイン
1.大人の7割以上が乳糖を消化する酵素を持っていない
「乳糖(ラクトース)」とは、牛乳に含まれる糖類の一種です。人間は、赤ちゃんのうちはこれを消化するための酵素「ラクターゼ」を持っています。しかし、大人になるとこの酵素は自然に減っていきます。ラクターゼがないと乳糖を上手く分解できず、膨満感を感じたり、お腹を下したり、ガスがたまったりと、消化不良を起こします。これを「乳糖不耐症」といいます。
過去の私のように、常に軟便だったりおならが出やすいという人は、それが普通になってしまっているので、乳製品が原因だと気が付かないものです。
機能性医学で有名なクリーブランド・クリニック(Cleveland Clinic)のディレクター、Dr.Mark Hymanによると、世界の人口の約75%が遺伝的に牛乳などの乳製品を消化できないそうです。診断されていないだけで、過敏症がある大人が多いのです。
乳製品の中でも、ヨーグルトや発酵度の高いチーズには乳酸菌が含まれていて、乳糖を食べてくれるため、乳糖不耐症のある人にも消化しやすいといわれています。
私の場合はヨーグルトの種類によるといったところで、「腸まで届く乳酸菌配合」とか「プロバイオティクス」とか書いてあるヨーグルトであれば、比較的インパクトが少ないようです。ただし、この後触れるカゼインやIGF-1はヨーグルトにも含まれているので、私としてはどちらにせよあまり積極的には摂りたくない食品です。
2.乳タンパクのカゼインを消化できない人が多い
カゼインは乳製品に含まれるたんぱく質で、分解されにくい構造をしています。これが腸に入ると、腸の粘膜を傷つけてしまいます。そして炎症を起こし、度重なるとリーキーガットにつながってしまいます。リーキーガットがあると、炎症物質が血中を巡り、様々な問題を起こします。
▼炎症について詳しくは
また、カゼインはグルテンと交差反応します。グルテン過敏症がある人がカゼインを摂取すると、免疫システムがグルテンだと思ってアタックしてしまいます。このため、グルテンフリーをしていても乳製品を食べ続けていると、症状がなかなか改善されないことがあります。
このように、カゼインや乳糖は腸内壁を傷つけたり消化に負担をかけたりして、腸内環境を乱します。腸内環境が乱れるということは、栄養素の吸収が阻害されるということです。子供であれば成長が阻害されたり、大人であれば骨が弱くなったり肌が荒れたり、脳にエネルギーが行かなければ集中力や記憶力が低下したりと、色々なところに悪影響が及びます。全ての健康は腸からといっても過言ではないのです。
3.ホルモンバランスを乱す
乳牛は大人になったら自然にお乳を出すようになるかというと、そうではありません。人間と同様、子供を産まないとお乳を出すことができません。だから妊娠する必要があるのですが、効率よく妊娠させるために人工授精をさせられます。人工授精をするためには周期を調節する必要があり、ホルモン剤が使われます。
特にアメリカ、カナダ、オーストラリアではホルモン剤に関する規制が緩く、人工授精のため以外にも、乳牛を早く大人にして搾乳量を増やすため、成長ホルモン(肥育ホルモン剤)が使われています。
輸入牛に関しては残留量の規制があり、国内に流通するものに関しては規定量以上のホルモンは検出されないようになっているようです。
日本では成長ホルモンの使用は許可されていませんが、エストロゲン(17-β エストラジオール )、プロゲステロン、テストステロンといったホルモンが繁殖障害の治療や、人工授精時期の調節などの目的に使用されています。
これらのホルモン剤に関して、厚生労働省は「人体に一生涯使用したとしても影響がない」として基準値を設けていません。一方で、EUでは厳戒に取り締まられており、ほとんどのホルモン剤の使用が禁止されています。
人体に影響がない量だとはいえ、乳製品や牛肉を食べたりすることで、自分の体が生成した以外のホルモンが体内に入るということです。多かれ少なかれ、自分のホルモンバランスに影響することが懸念されます。それがエストロゲン・ドミナンスなどのホルモンバランスの乱れを引き起こし、PMS、生理不順、生理痛の悪化などの不調から、乳がん、子宮がんなどの大きな病気の原因となるリスクがあるのです。
4.抗生剤や化学飼料の使用により安全性の問われる乳製品
牛舎の狭いスペースで育てられた乳牛は、病気が感染しやすい状態で生活しています。このため、感染予防の薬や抗生剤を打たれます。
また、成長ホルモンを打たれている乳牛の場合、搾乳量が増えるため、乳腺炎になりやすくなります。その場合も抗生物質を打たれます。乳牛に打たれた抗生物質は、多かれ少なかれ牛乳にも残留しますので、そこから作られた乳製品を食べる私たちも、不必要な抗生物質を摂取することになりえます。
その他、牛舎で飼われた牛は牧草ではなく、トウモロコシなどの穀物飼料を食べて育ちます。そもそも牛は自分でトウモロコシを収穫することはできないのに、トウモロコシを餌として与えられているのはおかしな話で、自然の摂理に反しています(大量生産のためにはいたしかたないのでしょうが)。
しかも、その飼料は大量生産されているので、遺伝子組み換え品だったり、化学農薬をまかれていることがあります。化学農薬を使われた飼料を食べた牛から取れた乳製品を食べると、その化学農薬は私たちの体に行きつきます。そうなると毒素を排出するために肝臓に負担がかかったり、体内で炎症を起こすことになります。
5.乳製品にはニキビを悪化させるIGF-1の分泌を促す
乳製品は、ニキビで悩む人なら一番に排除したい食べ物です。なぜなら、乳製品はIGF-1という成長因子の分泌を促す上、乳製品自体にもIGF-1が含まれているからです。
IGF-1は男性ホルモン「アンドロゲン」の分泌を促し、皮脂分泌をさかんにすることで、ニキビができやすい環境を作ってしまいます。このため、乳製品を抜いただけで、長年悩まされたしつこいニキビが治ってしまったという人も少なくありません。
牛乳も人間の母乳も、一つの共通した目的があります。「生き物を成長させる」ということです。子供は成長のため、血中に多くのIGF-1が存在します。IGF-1は細胞を成長させる役割を持っているため、成長には欠かせないのです。でも大人になると、そんなに多くのIGF-1は必要ありません。
さらに、IGF-1は癌細胞の成長や、腎臓病、糖尿病、心疾患にも関わりがあるという研究がいくつも出されています。ニキビとして症状がでているうちはまだかわいい方なのです。大人になった生き物にとって、過度のIGF-1レベルは寿命を縮ませる要因といってよいでしょう。
▼ニキビと乳製品の関係について詳しくはこちらを
6.乳製品を摂らないと骨が弱くなるというのは嘘
カルシウム=牛乳というイメージがありますが、完全に「カルシウムは~歩いてこない♪だ~から毎日飲むんだね~♪」の歌に国民的に洗脳されていると思います(歳がばれますかね?笑)。牛乳がベストのカルシウム源かといったら、そうでもないのです。
カルシウムといったら骨の健康⇒骨は白い⇒牛乳も白い⇒牛乳は骨に良い!を連想しがちですが、カルシウムは白くありませんよ!(笑)実は銀白色をしています。
牛乳には確かにカルシウムが多く含まれています。ただし、マグネシウムとのバランスが悪いのです。
カルシウムとマグネシウムは1:1のバランスで摂るのが理想とされていますが、牛乳100gあたりに含まれるカルシウムは110mg、マグネシウムは10gと、11:1の割合になっています。
これではカルシウム過剰、マグネシウム不足の状態になってしまいます。マグネシウムはただでさえ現代人が不足しがちな栄養素なので、乳製品でカルシウム過剰になるとさらに弊害がおこります。
マグネシウム不足は、不眠、不安感、便秘、頭痛、肩こり、不妊、骨粗しょう症などにつながります。皮肉なことに、乳製品の摂取量が多い国の方が、骨粗しょう症の発症率が高いことがわかっています。
さらに、骨の健康にはカルシウムよりもビタミンDの方が重要であることもわかってきています。
乳製品を摂らないとカルシウム不足になるかと思われがちですが、他の食品から十分に補うことができます。緑の葉野菜(ケール、小松菜)、海藻類、イワシやしらすなどの魚介類にもカルシウムは豊富で、マグネシウムとのバランスも良好です。
まとめ
牛乳=骨の健康、ヨーグルト=便秘改善というイメージがあり、健康食品としての認識が強い乳製品。実はそれが、骨粗しょう症の根源になったり、腸内環境を乱したり、ニキビを悪化させたり、しまいには癌の原因をつくるなどといわれても、にわかに信じがたいものがあるかと思います。
その他乳製品は、インスリン抵抗性を高めたり、甲状腺ホルモンに干渉したりする懸念もあります。製法も調べれば色々と出てきますが、高温殺菌のため栄養素が損なわれていたり、加工の過程で薬品が使われていたりと、色々な問題があります。大量の乳牛を育てるために大量の水や電力が使われる、といった環境への懸念もあります。
このため、乳製品は一般的に思われているほど良いものではないということがお分かりいただけると思います。乳製品を避けることにより不足するとされる栄養素の多くは、他の食品で容易に補うことができます。
健康に興味がない人や、乳製品ラブの人には、片っ端から色んなものを槍玉に挙げているように見えるかもしれません。
でも私がこのブログを通してお伝えしたいのは、私たちが食べている物は、思っているほど自分たちの体に合っていないのではないか、ということ。何も知らずに食べ続けていると病気のリスクとなり得るということ。それを知った上で、その食べ物とどう付き合うか考えようね、ということ。
「乳製品って体に悪いんだって」「きゃー!今後一口も食べないようにしようっ!」と脅したいわけではありません。
まずはリスクを知って、乳製品を自分の食生活にどう取り入れていくか、考える機会としていただければなによりです。
体に良いと思っているそのヨーグルトが、ホエイプロテインが、牛乳が。本当に毎日体に入れるべきものなのか。食べた後数時間~数日後に目立った症状はないか。1週間抜いてみたらどう変わるか。
などなど吟味しながら、摂る種類と量を調整していくことをおすすめします。
ではでは、乳製品との付き合い方を見直して、もっともっと健康に!
1. 文部科学省. 牛の成長促進を目的として使用されているホルモン剤(肥育ホルモン剤)
2. Katta, et al. Diet and Dermatology The Role of Dietary Intervention in Skin Disease
3. 文部科学省.日本食品標準成分表2015年版(七訂)乳類
4. Dr.Mark Hyman. Are You Still Consuming Dairy?
5. Dr.Mark Hyman(2018). Food: What the Heck Should I Eat?
6. Dr.Sara Gottfried MD. Ditch the Dairy