こんにちは!妊娠中&産後専門フィットネストレーナーのYUMIです。
授乳しているのに痩せないというママさん!
食事もめちゃくちゃ気を付けているし、定期的な運動もしているのに、体重計の針がまったく動かない!!とイライラしてませんか?
人によっては、「産んだら体重すぐに戻っちゃったー!」「完母でスルスルっと体重落ちました♡」という方もいらっしゃいます。
そんな人の話を聞くと、食事も運動も気を付けているのに自分はなぜ痩せないんだろう…と不安に思ってしまうママさんもいらっしゃると思います。
だからといって、授乳期に厳しいカロリー・糖質制限ダイエットをしたり激しい運動をしてしまうと、こんなリスクが伴います。
・母乳が出なくなる
・骨盤底筋群に負荷がかかり、尿もれが悪化する
・腹直筋離開が十分に治癒せず、腰痛や骨盤痛が残る
ということで今回の記事では、なかなか体重が落ちなくて悩んでいる授乳期のママさんが安堵できるように、授乳期に痩せるのはいかに難しいか、ということをお話していきます!
授乳しているのに痩せない理由~産後ダイエットとホルモン変化の関係
1.睡眠不足
生まれた直後に夜通し寝るという赤ちゃんはなかなかいません。
ほとんどの場合、産まれてから数ヶ月は2~3時間に1回の授乳が必要になります。胃が大きくなって夜間授乳が落ち着いた…と思ったら今度は夜泣きが始まったりなど、産後1、2年はろくに夜通し眠れないというママが多いでしょう。
母乳育児でもミルク育児でも、睡眠不足は痩せにくい大きな原因になってきます。
その理由はいくつかあります。
①満腹・空腹を知らせるホルモンのバランスが乱れる
睡眠不足だと、満腹・空腹を知らせる「レプチン」と「グレリン」というホルモンがおかしくなります。
レプチンは、お腹がいっぱいになったら「もう食べるのをやめた方がいいよ~」と教えてくれるホルモンです。
グレリンは逆に、「お腹が空いたよ~」と教えてくれるホルモンです。
スタンフォード大学の研究では、5時間睡眠の人と8時間睡眠の人のホルモンレベルを比べたところ、睡眠が短い方がレプチンが15.5%も減っていたということが分かりました(1)。
つまり、お腹がいっぱいのはずなのに「もう食べるのをやめたほうがいいよ~」というシグナルが小さくなり、食べ続けてしまうということ。
さらに、同じ研究では5時間睡眠の人はグレリンの分泌が14.9%も増えていました。つまり、「お腹が空いたよ~」のシグナルが大きくなるということ。
だから、睡眠不足の時はいつも以上に食べてしまうようになるのです。
②理性的な判断をする脳の分野に糖が送られなくなる
寝ていないと脳の機能が低下します。どういうことかというと、理性的な判断をする脳の「前頭前野」という場所に、エネルギーの元となるブドウ糖が送られにくくなるのです。
睡眠時間が6時間以下だと、前頭前野に送られるブドウ糖の量が12~14%も低下してしまいます。
つまり、理性的な判断ができにくくなるということ。
睡眠が十分にとれている時なら「これ食べたら太るからダメ」という判断ができても、睡眠が足りていないと理性が働かなくなり、「食べちゃおう」という選択をしてしまうわけです。
さらに、前頭前野にブドウ糖が送られにくくなると、脳は生命の危機だと感じ、すぐにエネルギーに変わりやすい精製された糖質を欲するようになります。
産後に妙に甘い物や炭水化物を欲するようになった…という方は、単に授乳でエネルギーが必要なだけではなく、寝不足も大いに関連しています。
その他、睡眠不足でインスリン抵抗性が高まるなどの原因もあります。詳しくはこちらの投稿にまとめていますので、読んでみてください。
2.ストレス
育児は自分でコントロールできないことが多く、一人の時間も取れずにストレスを抱えやすいものです。
ストレスも、痩せにくくなる大きな原因になってきます。
ストレスで痩せるという人もいますが、ストレスで太るという人もいます。
そもそもストレスとは、外的・内的な危機に対応するために中枢神経や内分泌系(ホルモン)が反応することです。
具体的には、交感神経が優勢になり、アドレナリンとコルチゾールといったホルモンが分泌されます。
アドレナリンは聞いたことがある人が多いと思います。
緊張した時などに心臓がドキドキしたり、手汗をかいたりするのはアドレナリンの働きです。
ムッとすることを言われた時に、ついつい怒鳴ってしまったりするのもアドレナリンの働きです。
アドレナリンは、一瞬のうちにものすごいパワーを発揮することを可能にするホルモンですが、短命で長時間出し続けることはできません。
ですが、もっと長期的なストレスに対応するために、体はコルチゾールという他のストレスホルモンを用意しています。
コルチゾールは体の血糖値と血圧を上げ、いつでも危機に対応できるように準備をしてくれます。これをFight-or-flight response(闘争・逃走反応)といって、消化や細胞の修復を一時的に止めて、ストレス対応を最優先させるのです。
コルチゾール値が高いと痩せにくくなる
コルチゾールが常に高い状態は、痩せにくさと関係しています。
短期的なストレスではアドレナリンが出て、むしろ食欲を鎮静します。
しかしストレスが長続きすると、ずっとコルチゾールが出ている状態になります。コルチゾールは食欲を増進するので、痩せにくい状態につながっていきます(2)。
また多くの研究で、ストレスが高い状態だと高脂肪・高糖質の食べ物を好む傾向が出ることがわかっています。
それが血糖値のジェットコースターを引き起こし、さらにコルチゾールとインスリンを増やします。インスリンは糖を脂肪細胞にため込むホルモンなので、インスリンが出ている時は痩せることができません。
自分の心の中の声もストレスになる
自分で感じている明らかなストレスはなくても、なかなか痩せない自分をなじっていたら、それもある種のストレスになります。
脳は外的ストレスと内的ストレスを区別できません。
つまり、鏡の前で自分の体を見て「醜いな…」とか「なんで痩せないの?バカバカ」と自分に対して言うのと、人から「子供産んだのになんでまだ太ってるの?」と言われるのと、脳は区別できないのです。
なので、痩せない自分や産後のお腹を見て自分をなじっている人は、すぐさまやめましょう!
あなたの体は人を作ったのです。もっとリスペクトが必要です!
3.授乳のホルモン
授乳をしている時は、体の中で大きなホルモンの変化が起こっています。
まず、プロラクチンとオキシトシンは授乳中高まるホルモンです。
プロラクチンは赤ちゃんが乳首に吸い付いてた時に、母乳を出し始めるように指令を出すホルモンです。
オキシトシンは、乳腺の周りの筋肉を収縮させて、母乳を出させるホルモンです。
どちらのホルモンも、授乳をしていなくても体に存在するものですが、分泌量が多すぎると体重増加につながることがあります(3,4,5)。
一方で、オキシトシンは体重増加を抑えることがあるとも言われています(6)。
また、授乳をしていてまだ生理が再開していない時は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の値が低くなっています。
これは実質更年期の状態と同じで、エストロゲンが足りなくてもプロゲステロンが足りなくても体重増加に繋がることがあります(7,8)。
じゃあ授乳して痩せた!と言ってる人はどうなのよ!と思うかもしれません。
ですが、みんな遺伝子も違えば育ってきた環境も違います。年齢も違いますし、食べているものも違いますし、何人目の子供かも違うでしょう。
特定のホルモンにどう反応するかは、その人それぞれ異なります。
体重が減らない原因がプロラクチンやオキシトシンの増加にあるのか、エストロゲンとプロゲステロンの低下にあるのか、もしくはその全部のせいなのか、その人の遺伝子、環境、年齢によって異なってきます。
ホルモンの問題は複雑に絡んでいるので、「こうだからこう!」とは言えないことがあります。
4.甲状腺機能の低下
甲状腺機能の低下も痩せにくい大きな原因の一つです。
約7%の女性が産後に甲状腺機能低下になると言われています。特に、妊娠前から甲状腺機能低下症があった場合は、産後になる確率が高いです(9)。
そもそも甲状腺ホルモンとは何なんでしょうか?
甲状腺は、喉のところにある蝶々のような形をした器官で、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺ホルモンは、細胞の働きをコントロールするホルモンです。カロリーの消費量をコントロールしたり、体全体の機能を調整しています。
甲状腺の機能が低下すると、以下のような症状が生じます。
・気分の上がり下がり
・だるさ
・薄毛
・痩せられない
どれも産後にはありがちですが、気になる症状や思い当たる点がある場合は、ホルモン値を医療機関でチェックしてもらうようにしましょう。
まとめ
授乳・育児をしながら痩せようとすることは、いかに大変なことか理解していただけましたでしょうか?
人とは比べず、自分の体は自分の体、といたわってあげましょう。
体はいつも生存することを優先にしています。
痩せることが生存に反するなら痩せません。
いくら運動しても食事を調整しても痩せないという場合は、ホルモンが「今の環境、今の体の状態では痩せたら危険」と言っていることに他ならないのです。
「じゃあいつになったら痩せられるの?」と焦燥感を覚える方もいらっしゃるでしょう。
それは、子供が夜通し寝るようになったらかもしれません。
生理が始まったらかもしれません。
授乳をやめたらかもしれません。
もしくはそれが全て当てはまっても、自分の中でのストレスをどうにかしないと痩せないかもしれません。
とにかく人と比べないようにしましょう。
私たちは「日本人だから」とひとくくりにしがちですが、みんな遺伝子が違います。
食事、環境、ストレスにどう反応するか、みんな違うのです。
授乳期は妊娠後期2です。妊娠中と同じように、授乳期も赤ちゃんに栄養を与えようと体が頑張っている時期です。
痩せない自分を責めるのをやめて、体が治癒し、ホルモンがバランスを取り戻すのに十分な時間を与えてあげてください。
授乳期はすぐに痩せることはできなくても、運動をして筋肉を付け、痩せやすい体の土台を作ることはできます。
私が週2で開催しているThe Best Shape Mamaのクラスでは、産後の体に配慮しつつ、しっかり効くエクササイズをおこなっていきます!
メンバーからのご質問にもプライベートのFacebookグループでお答えしていますので、ぜひのぞいてみてください!
<参考文献>
1. Stanford Medicine. Stanford study links obesity to hormonal changes from lack of sleep
2. Harvard Health Publishing. Why stress causes people to overeat
3. E Björkstrand, K Uvnäs-Moberg(1996). Central oxytocin increases food intake and daily weight gain in rats
4. Y Greenman, K Tordjman, N Stern(1998). Increased body weight associated with prolactin secreting pituitary adenomas: weight loss with normalization of prolactin levels
5. F Galluzzi, et al(2005).Reversible weight gain and prolactin levels–long-term follow-up in childhood
6. Elizabeth A. Lawson(2017). The effects of oxytocin on eating behaviour and metabolism in humans
7. Healthline. Does Estrogen Cause Weight Gain?
8. CentreSpringMD. 7 Signs of Low Progesterone
9. Sara Gottfried (2013). The Hormone Cure: Reclaim Balance, Sleep, Sex Drive and Vitality Naturally with the Gottfried Protocol. p240